『逃げ上手の若君』

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『逃げ上手の若君』

 前ページで触れたので。  今夏、視聴しているアニメの一つです。  私は不勉強なので、今作の主人公である「ほうじょう ときゆき」が実在したのかすら知りません。敵役である足利尊氏がもっとも有名な歴史上の人物だと思われますが、とはいえ、その時代がどんなだったかもイマイチ理解できていない。  そんな阿呆でも十分に楽しめるアニメ。  大河ドラマなんかでも気を抜くと、誰が敵で誰が味方だか分からなくなったり、朝廷やら幕府の組織がよくわからんまま頭が混乱したりするが、今作はいまのところ大丈夫。  キャラクター一人一人の個性が際立っている上に、悪役は徹底的に悪く描かれているから。  主人公はたしか十歳前後。少女みたいな美少年。  ネットで調べようとしたら、うっかりネタバレしかけたのでやめた。彼を取り巻く少年少女たちは概ね同年代であり、とっても漫画ちっくな外見。  私は吹雪くんが好き。彼はちょっと年上のお兄さんですね。アニメや漫画界には珍しい一重or奥二重の目元涼しい美少年(大食漢が玉に瑕)。  反面、敵役であるオッサンたちは、わりと現実ベースな風貌&凶悪そうな見た目。現状でラスボス感のある足利尊氏だけはややビジュアル系(瞳が虹色)。  時代背景についても、かなり早足ではあるが解説もしてくれるので、なんとなく勉強になってありがたい。年とると勉強する機会なんて意志のある人しか持てないものなのですよ。  今作を観ていると、悪役の重要性について感じ入る。  かつて、私がオタク街道をひた走っていた十代前半の頃。  当時の私は、漫画やアニメ好きが集う某雑誌を愛読していた(アニメージュやあの辺とは微妙に違うが表現が難しい)。  その雑誌は素人の投稿コーナーが盛り沢山で、なかにはプロはだしの画力を誇る人も多かった。毎号、絵が掲載されるレギュラー読者みたいな方もおり、その中に、鬼龍院さん(仮名。でも、そんな感じのペンネームだった)という方がいた。  鬼龍院さんは、生粋の「悪役推し」だった。  彼女は熱く語っていた。 「お願いだから悪役は改心しないで」と。  私は悪役推しではないが、彼女の気持ちはなんとなく分かる。  最後の最後で改心して主人公と握手しちゃったり、良い王様とかになって国を平和に統治とか、現実であれば素晴らしいが、創作の世界においては生温く締まりのないラストを迎えてしまう恐れもある。  私が出会った悪役中の悪役は鬼舞辻無惨だが、『鬼滅の刃』は悪役の宝庫だと思う。同情の余地がありすぎる者から、まったくない者まで、じつに多くの魅力ある悪役が登場する(私は童麿が一番好きだ!!)。  変則技で「主人公が悪に堕ちる」なんてのもあるが、これは主人公が元々は善人でなければならない。創作においては、なかなかの危険プレイ。  少年漫画の悪役は振り切ってほしい。  同時に、たった一つだけ極めた強みを持つ主人公は最強だ。 『週刊少年ジャンプ』作品を味わうのは、何十年ぶりかもしれん。ジャンプ作品は観ているが、『少年ジャンプ』は久々かも。  私は、私の世代は、週刊少年ジャンプに育てられてきたのだ。ろくな成長は果たせなかったが、ジャンプと共に歩めた至福の時期だった。
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