ほうそう、ほうそう。

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 ばつん、と周囲が暗闇に閉ざされる。真っ暗な闇の中、女の嗤い声と、何かが這いまわる音がしばらく聞こえていた気がする。もう駄目だ、きっと自分はここで死ぬんだ、と思ったことも。  それから、どれくらいの時間が過ぎたのか。 「ねえ、あなた、大丈夫!?」 「……え?」  私は人に肩を揺さぶられて目を覚ました。そこにいたのは、女の警備員さんである。私はトイレの蓋の上に座って気絶していたようだった。  一体何があったのだろう。さっきまで夜のように真っ暗だった空間が明るくなっている。それから、どうしてトイレのドアが壊れているのか。 「あ、れ?私、どうして……」 「それはこっちの台詞よ!」  警備員さんは、困惑したように私を上から下まで見て言ったのだった。 「貴女、どうやってこのトイレに入ったの!?私が機能の夕方や夜に見回りした時には、誰もいなかったはずなのに!!」  結論を言えば。  いつの間にか、私は翌日の朝まで飛ばされていたのである。逢魔時にトイレにいて、そこに閉じこもって恐怖体験をしたのはほんの数分のことだったと記憶しているのに。  しかも、うちの中学校で雇われている警備員さんが夕方と夜にトイレを見回った時、私の姿はなかったというのだ。彼女からすれば、私が見回りのあとにトイレに忍び込んで鍵をかけて閉じこもっていたようにしか見えなかったという。 ――一体、何が起きたの?あの放送は、何?  そういえば、友達が言っていた怪談を思い出したような気がする。逢魔時に、不思議な放送が聞こえることがあると。それを聞いた人間は、ここではない別の学校に連れていかれていしまうとか、そういう内容だったのではないか。  ならば私は、別の世界に連れていかれてしまったのだろうか。それで、戻ってこられたのだろうか。一体、何故? ――あるいは……。  あれから、十年以上が過ぎた。  あの日以来私はなんとなく怖くなって、五時まで学校に残ってサボるのをやめていた。なんだかんだいって勉強して高校、大学に入り、社会人になって今に至る。それはいい。  時々、今でも時々、怖くなるだけである。今、これを書いている私はちゃんと、元の世界に戻れているのだろうかと。本当はそうではないのに、そう思い込んでいるだけだったらどうしようと。  え?私がこの間、インスタに挙げた写真?え?  空の色が緑色だったって、それがどうしたっていうの?
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