いつか世界が気づくまで

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 放課後、加賀先輩のいる三年A組へと向かった。開いているドアからクラスの中をのぞき込むと、色白で細面の加賀先輩が下校の準備をしている。机の上には大きな紙袋が想像以上にたくさんのプレゼントで膨れていた。  それを見て、イラっとした。  加賀先輩に対してじゃない。山さんに対してだ。  どうしてこんな勝算の薄い相手を選ぶんだよ? 傷つけて下さいっていってるようなもんじゃん。  僕はちょっと大きすぎる声を出した。 「加賀先輩! ちょっと!」  先輩は急に大声で呼ばれて、驚いたような顔で教室の入り口までやって来た。 「俺? 何か用?」  サッとプレゼントを差し出す。 「女子から渡してくれって頼まれました」  加賀先輩は合点したような表情になり、プレゼントを受け取る。 「そうか。ありがとう。何かな?」  先輩はそういって包装紙を躊躇なく破り、中から出て来たものを見て大喜びした。 「樋口愛奈のサインじゃん! 俺、大ファンなんだ! しかも『直人さんへ』ってある!」  僕はそれを見てげんなりした。普通好きな男に女性アイドルのサインを贈るだろうか?しかも相手の名前入りって・・・。  どんだけ自己肯定感低いんだよ! 山さん!  加賀先輩はよっぽど嬉しかったんだろう。破いた包装紙をマジマジと見て贈り主を確認している。 「RISA?」  それから、僕の顔をじっと見つめると、その目は妙に冷たくなった。 「ひょっとして山寺理沙のことか? あの柔道部の?」  僕は嫌な予感がして、とぼけた。 「さあ、良く知りません」 「嘘吐け! このプレゼントを渡したのが山寺かどうかは絶対見分けがつくだろ! それに、お前がいつも山寺といるのを俺は知ってるんだよ。あいつ目立つから」 「だったらどうなんですか?」  僕は思いっきりにらんでやった。 「先輩に向かってその目は何だ?」 「見たまんまですけど」 「何だと!」  僕はパッとサイン色紙を奪い返すと、両手でへし折ってやった。  山さん、ゴメン! 「何すんだよ!」  加賀先輩が顔を大きく歪めて怒鳴る。 「あんたにやるくらいならゴミにした方がいい」 「この野郎!」  加賀先輩が僕の胸倉をつかみ上げた次の瞬間、巨大な影に僕は突き飛ばされた。そうして、加賀先輩は一本背負いされて廊下に投げ飛ばされたのだった。
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