いつか世界が気づくまで

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 下校時、山さんは黙りこくっていた。 「落ち込むなよ。あんな男、惚れる価値なかったんだ」  無言のままの山さんに僕はため息を吐く。 「もっと自分に自信持てよ。あんなのより良い男、いくらでもいるからさ」  するとそれまでずっと黙っていた山さんが突然僕を怒鳴りつけた。 「私が自信を持てないのは川島のせいなんだからね!」 「え? 何で僕のせいなんだよ?」 「川島は私のこと何でも知ってるのに、私のこと好きにならないじゃん! 一番私のことを理解してる川島が私に恋しない! だから、私自信持てないんだからね!」 僕は戸惑った。 「え・・・? じゃあ、もしかして山さんって僕のこと・・・?」  すると山さんは冷凍庫の奥の保冷剤みたいに冷え冷えとした目で断言した。 「好きじゃないわよ。勘違いしないでよね」  ハア? 僕はムッとした。 「何で僕が振られたみたいになってんだよ? この話の流れ、おかしいじゃん!」  すると山さんはやっとちょっとだけ笑った。  ふんわりした丸い顔に良く似合う明るい笑みが浮かんで、僕はホッとする。 「良いのよ、これで。私の気分が少しスッとしたんだから」  山さんは乙女だ。  山のように大きくて強いけど、心は誰よりも純情可憐なのだ。  このギャップの可愛さに世界が気づくまで、あとどれくらいだろう?  それまでは僕がこっそり独り占めしておこうと思う。  Fin.
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