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「本当、どいつもこいつもバカだな……」
亜玲が良い顔をするのは、俺の『特別』な奴に対してだけだ。そう、それすなわち――。
――俺の特別じゃなくなれば、亜玲は興味を失うのだ。
でも、口達者な亜玲のことだ。ま、上手く言って別れているんだろう。そうだ。そうに決まっている。
だって、そうじゃないと今頃亜玲は空の上だ。
「……どうしろっていうんだよ」
そう思いつつ、俺は缶ビールを開けた。口に運ぶと、なんとも形容しがたい味が口の中に広がる。
……多分これが、失恋の味。
なんて、感傷に浸っている場合ではない。
「どうにかして、亜玲から離れないと……」
奴がどうしてこんなことをするのか。それは全く分からない。
まぁ、どうせ俺のほうが幸せになるのが許せないとか、そういうことなんだろう。
……いずれは、飽きてくれるといいんだけれど。
と思って終わらせようとする俺は、随分なお人好しらしい。……知ってたけれどさ。
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