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その際に愚痴を聞いてもらったことがきっかけで、俺と先輩の縁は繋がった。
結構きつく見える顔立ちをしている先輩だけれど、懐に入れた人間にはめっぽう甘い。ついでにいえば、俺は先輩にとって弟分なんだろうな。
「けどさ、祈。ほんと、いい加減にしてもらったほうがいいんじゃないか?」
ビールを一口飲んで、先輩が眉間にしわを寄せてそう言ってくる。……いい加減に、してもらったらって。
「俺が頼んでいるわけじゃないんで、無理ですね」
「……ま、そうだな」
あれは亜玲が勝手に行っていることなのだ。俺への当てつけなのか、嫌がらせなのか。それはわからないが、まぁろくな理由じゃないだろう。
……やめてくれって言って、やめるような男でもないしな。
(そうだ。亜玲は、一度こうと決めたら意地でも曲げない根性を持っているんだ)
小さな頃の亜玲は、可愛くて天使のような男の子だったというのに。
……今じゃ、悪魔みたいな男になった。
「おいおい、そんな眉間にしわを寄せるなっての。……僕でよかったら、いくらでも愚痴くらい聞いてやるからさ」
ふと手が伸びてきて、先輩が俺の眉間をもむ。……そんなに怖い顔を、していたのだろうか。
「……先輩」
「おう」
「なんで、こんなことになると思います?」
そんなことを聞いたところで、解決しない。
理解しているけれど、聞かないとやっていられなかった。
「……そうだなぁ。俺はその上月とかいう奴について、詳しくは知らないからなぁ」
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