序章 悪魔な幼馴染から逃げ切りたい

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 天は二物を与えず、なんて嘘だ。嘘っぱちだ。  だって、俺の幼馴染はなにもかもを持っているんだから。 「あのさ、(いのり)」 「ん? どうした?」  にっこりと笑って、とぼけた。けれど彼――俺の恋人――の言いたいことなんて、手に取るようにわかる。  だって、そういう時期だから。この後、この恋人の口から出るのは――。 「ごめん、俺、他に好きな奴が出来たんだ」  少し頬を染めた恋人が、俺からそっと視線を逸らす。  あー、はいはい。何度も聞いた決まり文句。それからの言葉は、大体理解している。 「だからさ、その……別れて、くれないか?」  予想通りだった。  ついでに、奴の好きな奴も把握済み。  それは別に俺が恋人、いやこの場合は元恋人のストーカーをして突き止めたとか、そういうことじゃない。  だって、これは何度も聞いた『お決まりの流れでテンプレート』なのだから。 「……いいよ」  俺が笑って、そう言葉を返す。すると、元恋人はホッとしたように胸をなでおろしていた。
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