第1章

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 亜玲の指先は冷たかった。  その指に触れられていると、ゾクゾクとしたものが背中を駆けあがっていく。  ……頭が警告を鳴らした。このまま、ここにいてはいけないと。 「ふざけるな! 俺は、お前のことが嫌いなんだよ……!」  亜玲の手を振り払って、もう一度玄関のほうに身体を向ける。  ……時間の無駄だった。こいつと話そうとした俺が馬鹿だった。 (亜玲は、悪魔だ)  昔の天使のような亜玲は、もう居ないんだ。  今の亜玲は悪魔で、俺の不幸を願っているんだ。  ぎゅっと唇を結んで、俺は一歩を踏み出そうとした。……踏み出せなかったけれど。  それは、亜玲が俺の手首を掴んだからだ。 「なに、逃げようとしてるの?」  そう言った亜玲が、俺の身体を自身のほうに引き寄せる。気が付いたら、俺は亜玲の腕の中にいた。  驚いて目を見開けば、亜玲がぎゅうっと俺の身体を抱きしめてくる。……冗談じゃ、ない。 「離せ! お前にこんなことをされる筋合いは……!」  亜玲の腕の中から抜け出そうと、暴れる。が、そんな俺の抵抗を簡単にねじ伏せて、亜玲は素早く俺の身体を床に押し倒した。  そのまま亜玲は俺の身体の上に跨ってくる。頭の中でさらに強い警告音が響く。このままだと、ダメだと。
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