第1章

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 それに、戸惑った。でも、ほっとした自分もいた。  亜玲は昨日の言葉なんて気にもしていないんだ。一時期の感情、口から咄嗟に出てしまった言葉なんだって、理解してくれたんだ。  そう決めつけて、結局俺は亜玲に謝罪しないままだった。  ……だが、中学生を迎えた頃から。亜玲は何処となくおかしくなった。  多分、それは深く関わっていない人ならば気が付かないような変化。が、俺は気が付いて。そのうえで気のせいだって誤魔化した。  そして、中学校の卒業式を迎えて。俺たちの関係は、徐々に歪になっていく。 「ごめんね、私、上月くんのことが好きなんだ」  ずっと好きだった女の子。俺が告白して、彼女の返事はこれだった。  ……ここまでは、まだよくある話だろう。だって、亜玲はかっこいいから。 「ごめん、祈。俺、上月のことを好きになったんだ」  初めてできた恋人は同性で男だった。だけど、俺は本気で好きだった。なのに、奴は付き合って三ヶ月の日に俺にそう言って別れを告げた。  それから、何度も何度も同じようなことが続いて。  ここまで来ると、鈍い俺でもさすがに気が付いた。  ――亜玲が、俺の好きな奴、もしくは俺の恋人の心を奪っているのだと。
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