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「きゃああああっ!」
大きな叫び声で、目が覚めた。
その瞬間、寝転んでいた俺のそばから何かが飛び立った。
「ぐえっ!」
その際、何かに俺は腹を踏まれ、その苦しさにしばらく悶えていた。
「あ、あれ?」
腹を抑えながら起き上がり、茫然とした。
ここはどこだ?
さっきまで居たはずの校舎裏ではなく、草木が茂る森の中。
夕方だったはずだが、木漏れ日が地面に降り注いでいる。
そうだ、さっき依澄にキスした瞬間に酷い眩暈のような感覚が襲ってきて……。
俺はハッと気がつき「依澄、依澄は……?」と辺りを見回した。
「……千早、ごめん。お腹、痛かった?」
依澄とは思えない野太い声が俺の声に反応する。
「依澄……なのか?どこにいるんだ?ここは一体どこなんだ!?」
「わからない、わからないよ…。どうしてこんな……」
依澄本人らしき声が泣いているようだったので、大木に隠れる彼女のそばに歩み寄った。
「千早……嫌だ、見ないでぇ……」
しゃがみこみ、緑色の腕で全身を隠そうとする彼女。
腕の隙間から見えるその金色の瞳から、彼女が初めて見せる涙がこぼれていた。
―――魔物。
俺は咄嗟にRPGに出てくるような魔物を思い浮かべてしまい、その禍々しい姿に「ひぃっ」と驚きを隠すことが出来なかった。
俺の反応にショックを受け、泣き叫ぶ依澄。
「ご、ごめん。あの……ちょっと待っていて。誰か人がいないか、その辺見てくるから」
そう言って依澄に俺の制服のブレザーを被せ、森の小道を走り出した。
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