ブランコ

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「その日は、ちょっとおしゃれしてたんです。」 木ノ下さんは小学生の頃の話をしてくれた。 彼女の家は貧乏だったため、よく母親が友達から服をもらってきていた。でも、たまにブランドものの服があったりするから、彼女も素直に喜んでいたという。 「朋子と公園で遊ぶ約束をしてたので、もらったばかりのブランドものの服を着てったんです。たしかELLEの花柄のワンピースでした。」 ふたりはブランコに乗って遊んでいた。 「どっちが上までいけるか競争してたんです」 ブランコの椅子の上に立って、勢いをつけた。 体が地面とほぼ平行になるまで上がった時 カシャッ カシャカシャッ 突然、背後でカメラのシャッターをきる音がした。 「びっくりして後ろを見ようとしたんですけど、勢いがついてたからよく見れなかったんです。」 彼女の体が後ろに上がる度に、 カシャッ カシャカシャッ とシャッターをきる音が繰り返された。 「ブランコの勢いがおさまるのを待って、後ろを見たんですけど…」 50歳ぐらいの男が、カメラ越しに彼女の方をジッと見つめていた。 少し、竹中直人に似ていたらしい。
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