他人の人生

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 さあどうだ。  意気込(いきご)んでタップして、目当てのアカウントを探す。  見つけた!  ドックン。  きゅんと胸が(ちぢ)む。  息を詰めて見つめる。 「さて、視聴回数は」  司馬(しば)ゆーたは、自分の目を疑った。  ゼロ?  0なんてこと、あるのか? 「うおおおおおおお、ゼロかよ、ゼロ!」  世界中に向けて発信したのに、だれ一人として見ていないというのか。 「いやー、まいった、まいった。冗談だろう?」  ぱたん、パソコンの(ふた)を閉じ、再度開く。  いや、何度開いても同じだから!  あれから一分もたってないから!  冷静な声が右上から降り注いでくるような気がするが無視。 「もしかしたら、ほら、見間違(みまちが)いかもしれないし」  そんなわけ、ないだろ。 「よく似た、別のアカウントを間違えて開いちゃったのかもしれないし」  司馬ゆーたのファーストチャレンジ、なんてダサいアカウント、間違えるわけないじゃん。 「ああ、やっぱゼロか……」  司馬ゆーたは頭を抱えてのけぞった。  何回見ても、数字は増えない。  そりゃそうだ。 「世の中、甘くねえ~」  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加