他人の人生

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 あたりまえったらあたりまえ~  みょうちきりんなメロディと共に登場した男は、冗談みたいに派手な黄緑色の眼鏡をかけ「これから、あたりまえなことを言います!」と声を張った。  眼鏡、派手だけどそれ以外があまりにも地味…… 「パリパリパリパリ軽い歯ざわり、しょっぱさのあとに、じんわりくる旨味、ポテチ最高!!」  そんなこと、みんな知ってるよ!  得意そうに空袋(からぶくろ)を見せているけど、オマエが作ったわけじゃねーだろ? 「みんな大好き、ふわふわスポンジにほどよい甘さのクリーム、たっぷりかかったチョコレート、これってもうケーキじゃん、チョコパイまじですげえ、ケーキがいつでもどこでも食べられるってすごくない?」    本当にあたりまえのことしか言ってねーじゃん…… 「ただの恥じゃん、こんなの!」  司馬ゆーたは床に寝っ転がって、スマートフォンを放り出した。  別の端末から入ったせいだろう、司馬ゆーたのファーストチャレンジの再生回数が0から1に変わったことが、余計に胸をえぐる。  派手な眼鏡ぐらいでキャラが立つわけじゃない、地味な顔、中肉中背のこれと言って特徴のない体つき、」インパクトゼロ、目新しさゼロ、つまり。 「つまらん!」  司馬ゆーたは床をごろごろ転がった。 「あーもう無理イ!」
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