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Prologue
「や……」
声を出そうとすると、するっと舌を差し込まれる。顔がしっかり固定されていて、動けない。
どれだけ口の中で逃げても、しつこく追いかけられて、強く舐められる。それを何度も繰り返しているうちに身体の力が抜けてくるのが分かった。
軽々テーブルを避けるくらいなので、凛が押しても引いてもびくともしない。
むしろ力強い腕の中で、抵抗は奪われていく。それにすら、心地よくなりそうなのが怖い。
「や、……ぁ」
「なんて顔してるんだ。すごく可愛い。人を呼ばなくていいの?」
また、角度を変えて深くキスされる。
「……は……ぁっ」
凛は息継ぎだけで必死だ。触れ合う唇の感触とか、口の中までくまなく探られるその生々しい感触とか、キスってこんなクラクラするものだっただろうか。
──身体に力も入らないし、大声出すとか、無理……。
飽きることなく口の中をまさぐられて、キスってこんなに気持ちいいんだと凛は驚く。
「なあ? 呼べよ」
耳元で低く囁かれるその声に、背中がぞくんとする。
甘くて、官能的な声。
「あ……」
凛が逆らえないと見て取ったのか、不敵にくすりと笑った彼は、再度ゆっくりと凛の唇に自身のそれを重ねる。歯の裏も、舌の根元も、ありとあらゆるところを舐め尽くされた気がした。
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