第一章 役員秘書になってみよう

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 凛が入社した時はかなり厳しい先輩がいて、研修時代であるOJTの時から大変な思いをした。  支店にやってくるお客様はアソシエイトのお客様ではなく、営業社員のお客様だ。  当然、凛達の不手際で怒らせるわけにはいかない。そのため来客にも電話対応にもかなり、気を使う立場なのだ。  凛はかなり厳しく教えられながら、業務をここまでこなしてきた。入社してしばらくは厳しいと思ったけれども、今はそれに感謝している。  お陰で自分の対応はどこに出しても、ある程度恥ずかしくないものだという自覚はあるからだ。  それに加えて、白石家のしつけも割と厳しかったという覚えがある。  そんな白石家の玄関に凛と父は向き合っていた。 「今時の子?」  まずはそこを確認したい。果たして凛もその『今どきの子』の中に含まれているのか。  これは割と大事なことだ。凛としては。 「今日は社長室にお客様が来ていたんだ」  ツッコめるような状況でもないので、凛は玄関で立ったまま話を聞いていた。  そんなことより父は今の会社の問題点を凛に話したいらしい。 「お茶を出してって頼んだら、僕の前に人数分置くわけ。回して下さい、って感じだな」  凛の頭に『奥のお客さんに回してもらっていいっすか?』という居酒屋の店員さんの姿が浮かんでくる。
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