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応接に通すような社長のお客様に、それがまずいことは凛にもさすがに分かる。
──それはない!
「お父さん、それは今どき関係ないわ! 常識の問題でしょう。居酒屋じゃないんだから」
「よかったー。凛ならやらないよな?」
そんな父の言葉に凛は安心した。どうやら凛も今どきの子に含んでもらっているようだ。
「先輩に怒られちゃうよ。やらないわよ。そんなこと」
「やっぱりなぁ……で、注意したわけ。そっとね。そしたらふてくされて、翌日から来なくなった」
凛の父も昔は厳しい人だったが、人の上に立つようになってかなり穏やかになった。
それでも昔から誰かを激しく人前でなじったり叱りつけるようなことは、絶対にしない人だ。凛にも厳しかったけれど、理路整然と叱られることの方が多かった。
(それでも来なくなるって……)
なるほど、今時の子は?と言いたくなるわけである。
「で……? ん? まさか……」
「未練がなかったら、うちの社長秘書をやらないか」
へらりと笑った父に、凛は冷めた目線を飛ばす。怯んだ父を押し退けて、玄関を上がることに成功した。
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