第一章 役員秘書になってみよう

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 そのままリビングに向かう凛の後を父がついてきながら「秘書と言ったっていわゆる、アソシエイトみたいなもんだし、営業サポートと仕事は大幅には変わらないと思う」とか一生懸命言っているのが、背後から聞こえてきた。 「募集したらいいじゃない」  くるりと振り返って、凛は父に伝える。  ──父親が幹部にいる会社とか、どうなのよ……。  業務内容はともかくとして、凛が引っかかるのはそこだ。  凛の父は身内だからといって贔屓するような人ではないが、社内にはそれを不快に思う人もいるのではないのだろうか。 「信用できないと困るし、今回みたいなことになったらお父さんの顔は丸潰れだろう」  後がないんだよ。と真顔で言われる。 「……困ってるの?」  凛は足を止めた。今度はキッチンで向きあう二人だ。 「正直、かなり」  父は困った顔を隠しもしない。 「私、秘書は経験ないけど」 「共有スケジューラー使える?」 「当たり前でしょ。営業さんのスケジュール、管理しなきゃいけないんだから」 「お茶出せる?」 「バカにしてんの?」 「スケジュール調整できる?」 「できますよ」 「パソコンもそれなりだし、いざとなれば、運転もできるしな」  採用!と言われる。 「はっ?」 「やってみよう! 秘書! 凛ならできる!」
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