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そのままリビングに向かう凛の後を父がついてきながら「秘書と言ったっていわゆる、アソシエイトみたいなもんだし、営業サポートと仕事は大幅には変わらないと思う」とか一生懸命言っているのが、背後から聞こえてきた。
「募集したらいいじゃない」
くるりと振り返って、凛は父に伝える。
──父親が幹部にいる会社とか、どうなのよ……。
業務内容はともかくとして、凛が引っかかるのはそこだ。
凛の父は身内だからといって贔屓するような人ではないが、社内にはそれを不快に思う人もいるのではないのだろうか。
「信用できないと困るし、今回みたいなことになったらお父さんの顔は丸潰れだろう」
後がないんだよ。と真顔で言われる。
「……困ってるの?」
凛は足を止めた。今度はキッチンで向きあう二人だ。
「正直、かなり」
父は困った顔を隠しもしない。
「私、秘書は経験ないけど」
「共有スケジューラー使える?」
「当たり前でしょ。営業さんのスケジュール、管理しなきゃいけないんだから」
「お茶出せる?」
「バカにしてんの?」
「スケジュール調整できる?」
「できますよ」
「パソコンもそれなりだし、いざとなれば、運転もできるしな」
採用!と言われる。
「はっ?」
「やってみよう! 秘書! 凛ならできる!」
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