エピローグ

1/1
前へ
/13ページ
次へ

エピローグ

 「…大丈夫か?」  昔の恋を思い出していた私は、随分と長い間、思いに沈んでいたらしい。  「ええ。少し、昔を思い出していただけ」  私は夫、清川雅文(きよかわまさふみ)に微笑んだ。  清川とは、春田への想いを捨てきれず、時々ここへ来ては泣いていたある日、話しかけられた。  最初は、ぞんざいにあしらっていたのだが、清川は、めげない。  清川は、春田と違って、少しズルいところもあるそんな男で、だが、そんな違うところが少し楽で…。  いつしか、付き合うようになった。  春田には、あれ以来、会っていない。  彼は今、幸せだろうか…?  それは、わからない。  けれど、もしも、会うことがあったなら…そんなこともあったねと、笑い合えればいい。そう思う。  今でも、色々な恋がここで消え、またある時は叶っているのだろう。  この、星の咲く木の下で……。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加