2 神様のいたずら

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 実行委員本部のテントで、並んで座っていた春田と夏目の前では、体育祭、最後の種目。対校リレーが始まっていた。  春田と夏目を含む実行委員会が駆けずり回ったおかげもあって、二校合同体育祭は、大成功で幕を下ろすことが出来そうで、二人はほっと胸を撫で下ろす。  接戦のリレーを見ながら、春田は口を開いた。  「夏目、ありがとう。夏目がいなかったら、ここまで来れなかったと思う」  「…春田…」  「夏目はすごいな。俺と違って頭が柔らかくって」  「え?ちょっと馬鹿にしてる?」  「してないよ。本当に、助かった。ありがとう」  春田は、夏目に手を差し出した。  その、春田の顔を見た瞬間、夏目の心臓が跳ねる。  今走っている生徒と同じような全力疾走を始めた心臓が、うるさい。  「夏目?」  「こ、こちらこそ!ありがとうね!」  熱を持った手を体育祭の興奮に紛れさせて、再び、ぎゅっと力を込めて春田の手を握った。  ちょっと痛そうな顔をしつつも、春田と夏目は笑い合ったのだった。  しかし、楽しい反面、夏目は少し焦る。    (困ったな…)  春田と再会してから、一度振られた時に封印した気持ちの蓋が、カタコトと暴れ出していることには気づいていた。  今もまだ、春田があの時の彼女と付き合っているかはわからない。  わからないが、一度、自分はキッパリと断られているわけで…。  この想いの蓋は決して、開けてはいけない。  そう思っていたのに。  さっきのやりとりで、その努力も無駄になりそうだった。  その、焦りから夏目が間違った選択をしてしまったのだと気づくのは、数日後の事になる…。
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