ドキッ!検事だらけの闇鍋大会⭐︎

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 耳を疑う藤次の発言に瞬き、一同も一斉に食材に手を伸ばす。 「た、民ちゃん!流石にコレは入れないよね?開封済みの5年前のポン酢…」 「えっ?普通に入れますよ検事。」 「じ、じゃあこの干からびた漬物は、流石にナシだよな青柳!」 「大塚、あんたバカ?それ胡瓜なんだけど。」 「きっ!!」 「じ、じゃあ!この粉吹いてる赤いグジュグジュしたのは?!」 「いやあねぇ檜山、プチトマトよ。」 「あ、あの…青柳、さん。じゃあこのトレーに入ったビーフジャーキーみたいなのは…」 「何よ奈々子。どう見てもそれ牛肉でしょ?」 「…まさかと思いますが青柳検事、この萎びたタコも使うおつもりですか?」 「あら楢山君、海鮮は嫌い?」 「…………」  キョトンとする民子に戦慄しながら、一同はザッと踵を返し円陣を組む。 「あかん。あんな雑な食品衛生管理の姐さんが作ったモンなんか食わされてみい!100パー腹下す!どうにか逃げる手段を考えんと!」 「だ、だけどどう言って逃げるんだよ棗!大体お前、さっき一抜けしようとしたら止められただろう?!何握られてるんだい?!」 「い、いやそれは…」 「んん?!柏木検事、その話もう少し詳しく」 「大塚!今はそんな事よりもやなぁ!」 「そ、そうだぞ大塚!今は棗の粗探しより己の身の安全を考えないと!」 「ひ、檜山君の言う通りよ大塚君!何とかしないと、全員午後は医務室かトイレ行きよ!!」 「俺は午後から裁判所だから、できればそれは避けたいな。検事が食あたりで裁判を欠席したなんて、笑い話にもならん。…いや、寧ろマスコミや傍聴マニアは喜ぶか…」  賢太郎の発した『マスコミ』の単語に、一同は震え上がる。 「こ、困るよ!傍聴マニアはともかくマスコミは!僕まだ家のローン残ってるし!!」 「いやいや柏木検事!傍聴マニアの拡散力も侮りがたしですよ!!マニアの中にインフルエンサーなんていたら、下手すればマスコミより影響力が…」 「よせ!言うな大塚!!お前が言うと説得力あり過ぎて更に怖い!」 「こんな事で週刊誌に載るなんてイヤ〜!!」 「…………」  自分の発言に慌てふためく先輩検事達を見ながら、賢太郎は頭を掻く。 「まいったな。逃走計画どころの話じゃなくなった。」 「お前、それ本気で言うとんか?」 「ん?」 「ははは。別に、何でもあらへん。そやし、どうにか抜け道はないもんかのぅ〜。法律なんて抜け道や矛盾だらけやのに…」 「ふむ…」  そうして、賢太郎は顎に手を当て暫く思案した後、ポツリと呟く。 「確か例外として、品質の劣化が極めて少ないとされているアイスクリームやチューインガム、砂糖や食塩、野菜類や果物は加工食品ではないから賞味期限の表示義務は無く、判断は個人に委ねられるが、見た目や味はともかく、食べても害はないはず…」 「せ、せや!賞味期限は、『この期限内であればおいしく食べられる』言う定義のはずや!そんで確か、賞味期限が表示されている食品は、品質の劣化が比較的穏やかな食品やったはず!何より、鍋やから加熱する!楢山の言う通り味さえ我慢すれば、切り抜けられるんちゃうか?!」 「そ、そうなのか、な?」 「じ、若干、言葉の端々の『はず』って単語が不安だけど、棗はともかく楢山が言うなら…なあ、大塚。」 「う、うん。まあ、だな。檜山…」 「ホントにホントに、マスコミ沙汰にならない?楢山君!」  藁をも縋る表情で見つめてくる先輩達の前に、賢太郎はピッと人差し指を立てて見せる。 「では、こう言うのはどうでしょう。」 * 「えっ!?私は調理に参加しちゃダメなの?!」  キョトンとする民子に、賢太郎はにーっこりと微笑み口を開く。 「みんなで話し合った結果、この鍋は青柳先輩への祝いの品として、自分達が作らせていただきます。」 「祝いってぇ〜…なんの?」 「な、何やねん姐さん!み、水臭いで!惚れた男との新生活、僕らに祝わせて下さいよ〜」 「そうそう!見る目がある青柳さんのお眼鏡にかかった彼氏さん!きっとイケメンで優しい人なんだろーなー!羨ましい〜!お鍋つつきながらぁー、惚気話聞かせてくださいよ〜!」 「そ、そうそう!奈々ちゃんや棗の言う通り!今日は僕たちに一肌脱がせてよ!民ちゃん!」 「そうだぞ青柳!な!檜山!!」 「お、おう!任せとけ青柳!!」
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