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モブ子焦る
なにやら目の前でリア様とダリオン殿下――男二人が楽しそうに、コソコソ内緒の話しをはじめた。2人で話をしてはニヤニヤするリア様……「そうなのか」「ウンウン」と、ダリオス殿下に変なこと聞いているみたい。
「あの、リア様?」
「うん? ああ、ちょっと待って」
さっき見せた、冷たい感じのリア様とは違い、いつもの優しいリア様に戻ったからいいけど。私は何を話しているのか気になり、そっと2人の話に聞き耳をたてた。
「ダリオス、あの店のケーキはそんなに美味しいのか」
「うん。女の子をそのケーキ店に連れていくと、笑顔になるって。その後のデートが上手くいくって、副団長が言っていたよ」
「なに、デートが上手くいく? それはいいことを聞いたな。では僕も、ダリオスに一つ教えようかな? 女の子の胸は、僕達が思っている以上に柔らかい」
「え、それ本当? 本当なの」
――なっ⁉︎ 学園のテラス席で、リア様はなんて事を弟王子に教えてるの⁉︎
リア様に「やめなさい」って、前から睨んでも彼はこちらを見ない。こうなったら……お行儀悪いけど。テーブルの下から足を伸ばして、リア様の足を軽く突っついた。
いきなりコツンと触られて、驚いたのか。
リア様はこっちを向く。
「どうしたの、ナル?」
「あ、あのですね。おふたりの話……こちらに、まる聞こえです」
「ぼ、僕達の話が聞こえていた? あー。ハハッ、ごめん」
リア様、そこで照れない。
恥ずかしいのは、こっちです。
「ぼくが思うよりも、胸は柔らかいのかぁ〜」
ダリオス殿下はボソッと呟き、私の胸をがっつり見た。
「まだ、胸は揉んだことがないけど。胸って柔らかいんだぁ」
はい。ダリオス殿下は大きな声で胸を連呼しない。
なんで、この王子達は周りを気にしないの?
私達の話が聞こえて、みなさんがジロジロ見てきます……恥ずかしい。
それとは別に2人とも、制服の上から、大きくない私の胸をチラチラ見ない。そこ、手を動かさない。
「胸ねぇ〜、気になる」
ダリオス殿下がぼそっと呟いたとき、後ろからこちらへ来る途中の、ある人物が反応を返した。
「ダリ、胸がどうした?」
訪れた人別に、周りがざわつきはじめた。
あら、書庫からこちらへ来たんですね。
ダリオス殿下は声の主が誰だか気が付き、天使の笑顔を浮かべて振り向く。
「こんにちは、セル兄様とイーリス嬢」
リア様は来た人物がわかり、フウッとため息をつき、周りは高貴なふたりの登場にざわめき始めた。――その気持ちわかる、わかるよ。私だってこんなに近くではなく、周りに混ざって、遠くから傍観したい。
――だって、学園のテラスに、王子が3人集まったのですもの。
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