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イストリア王子
帰りの馬車の中で、ボーッと窓の外を眺めていた。
(今朝までとは、どの景色も違う……)
薄暗く、灰色だった俺の世界に、とつじょ色が付いた。それは鮮やかで綺麗な茶色の髪の色に、グリーン色。
その色が見えた途端、俺の周りに色がついた。
(はぁ? な、何が起こった?)
俺は驚きと日々無気力で努力していないから、その子を抱き止めることができず、その子とその場に倒れてしまった。普段から体を鍛えていたら、どうってことないだろうに……なんて、ひ弱な俺。
「……(まじか)」
いままで、他人の顔の認識が出来ずにいたのに、その子の顔だけはハッキリ見えた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
目の前の困った顔。
涙ぐんだ顔。
照れた顔、
焦った顔。
彼女の表情を、もっと側で見たいと思った。
「……ナルか、可愛かったなぁ」
いい香りがして、柔らかかった。
女の子って、あんなにも柔らかいのか。
「ナルを、俺だけのものにしたいな」
今まで見ていた薄暗く灰色ではない、澄み渡った青空を眺めながら、俺は城へと帰った。
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