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イーリス嬢、あなたもか⁉︎
おや、おや。
もしやと思い私は
「はやく、邪魔しに行きなさいよ」
と隣にしゃがむ、イーリス嬢を肘で突っついた。
この非常識な私の態度に、公爵家の令嬢イーリス様が「無礼者!」と怒らなかったら、ありうると思ったのだ。
「や、やめて……ぜったいに無理よ、あんなとこのに行くなんて……人の恋路を邪魔すると、馬に蹴られるとかいうでしょ?」
人の恋路。
馬。
馬に蹴られるなんて……フフ。
「イーリス様は、難しいことわざを知ってるのですね。――でも、その馬に蹴られてこい」
――私はそれが見たい!
「ええ⁉︎ 酷い、他人事だと思って」
「だって、私はモブだもの」
と言えば。
イーリス様は瞳を大きく開いた。
「モブ? あなたモブなの? なんてうらやましいの。……私なんて悪役令嬢よ。モブかぁ、いいなぁ〜私も見る側になりたかった。セルベンス殿下は素敵だけど、あのヒロインさんちょっと面白いんだもの」
フフ、笑った。
「わかる。あの喋り方は面白いよね」
「でしょう……って、あなたも私と同じ?」
「えへへ、そう見たいです」
2人で見合って笑った。まあ、悪役令嬢が転生者なのはよくある話。でも、彼女が生粋の公爵令嬢じゃないのは少し残念だけど、私と同じ人がいて嬉しかった。
その時、トントンと誰か肩を叩く。
ひゃぁ、誰? ――あっ! 側にリア様がいることをすっかり忘れて、普通にイーリス様と会話していた。
私たちの話を聞いていたリア様に、何を言われるのか構えたが。
「……ナル」
「はい! な、なんでしょうか、リア様?」
「イーリス嬢と楽しそうなところ悪いが。すぐに、この場を離れた方がいいぞ」
――え? 追求してくるのかと思ったが、ちがう言葉が聞こえた。
「すぐに、ここを離れた方がいい?」
「ああ……」
茂みから、セルベンス殿下がいた方を見ようとした、リア様が眉をひそめた。
「遅かった……。ナル、イーリス嬢、覚悟して、俺達さっきから、兄上に見つかっている」
え? 兄上に見つかっている?
という事は………あちゃ、すでに遅し。茂みに隠れていた私達を、眉をひそめながら見下ろすセルベンス殿下がいた。
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