もう1人の攻略者対象あらわる。

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もう1人の攻略者対象あらわる。

「君達はそこで何をしている? イストリア、おまえもだ」  セルベンス殿下に睨まれて、リア様は私を自分の方へと引き寄せた。 「兄上、見ての通り。俺はナル嬢と逢い引き中です」 「逢い引き? ……そうか」と、あまり興味がない返答の後、セルベンス殿下の瞳は婚約者のイーリス様に向いた。 「だが、イストリア。ここに私の婚約者のイーリス嬢もいるが、お前はどっちと逢い引きしてたんだ」  今度は怒りを含んだ低い声、殿下はかなりご立腹のようだ。やはりゲームとは違うのか、セルベンス殿下はヒロインには興味がないらしく、離れた場所に置いてこちらへきたみたい。 「もう、セルベンスさぁ~まぁ。そんな所で、どうしたんですか~?」   「いいや、なんでも無い。君はそこで待っていてくれ。……た、頼む、イストリア、あの子を連れて何処かに行ってくれないか」  そう、リア様にお願いしたが。  リア様は嫌だと、ブンブン首を振った。 「勘弁してください、兄上。俺、あの子は苦手です」 「そんなこと言うな、私も苦手だ――話が合わないと言うか、通じない」  王子二人は、ヒロインが苦手みたい。 「あの、セルベンス殿下。私が彼女を連れて行きましょうか?」  イーリス様が手をあげながら、私を見てにっこり笑った。――えっ、私も? いやぁ〜です。彼女とは話が合わないと思います。と、目で訴えた。 「リスはだめだ。私はリスと書庫へ行きたい。昨日、見たい本があると言っていただろう?」 「え? セル様、覚えていてくださったのですか?」 「当たり前だ。私は楽しみにしている」 「……セル様」  ウホッ。  お二人が「リス」「セル様」と呼んで手を取りあった。     うわぁ〜。  見てる、こっちまで恥ずかしくなる。  しかし、誰もリリスさんを連れて行かない。  さてさて、どうするかと私達は悩んでいた。   「リリス?」 「あっ、アスタさぁ~まぁ」 「ここで、何をしてんだ?」 「え〜っと」  リリスさんの名前を誰かが呼んだ。  庭園に誰かが来たと見れば。    ――おお、あの赤い髪の人は騎士団所属攻略者の一人、アスタロト・ウェルキン様……なんて、凛々しいお顔立ち。 「私、セルベンスさぁ〜まぁと話そうときたんですぅ」   「そうか。――セルベンス殿下、僕がリリーを連れて行っても良いでしょうか?」  おおっ「リリー」呼びだ。   「私は構わぬが、ディスコリア嬢はどうしたい?」 「ええっ~セルベンスさぁ~まぁとアスタさぁ~まぁ。わぁた~しを巡ってぇ~争わないで~ください」  はぁい? みんなの目がまん丸になったが。  アスタロト様はそんなリリスを見て、爽やかに笑っていた。ほぉ……出会って間もないが、親密度が高い。 「リリー」    アスタロト様は紳士らしく、リリスさん手を差し出した。  「新しいケーキが出たって話を聞いた? 今から、テラスでお茶をしないか」   「ケーキ? いきますぅ〜アスタさぁ~ま」 「ハハ、喜んでくれたみたいだね。――セルベンス殿下、イストリア殿下、イーリス様とお友達の方、僕達は失礼します」  アスタロト様は礼儀正しく頭を下げ、リリスさんをエスコートして、庭園から去って行った。それを見届けたセルベンス殿下は、イーリス様に手を差し出した。 「じゃ、私達も書庫へ行こうか」 「はい、セル様。イストリア殿下、ナルさん、失礼します  手を取り合い、仲良く去って行った。  庭園の隅に残るのは、私とリア様。 「ナル、俺達はどうする?」 「私、お腹空きました」  素直に答えた。 「じゃぁ。新しいケーキが出たみたいだし、テラスでケーキを食べない?」 「いいですね。行きましょう!」  テラスに行った、リリスさんとアスタロト様が気になるし。私たちも、テラスへと向かった。
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