23人が本棚に入れています
本棚に追加
モブ子とケーキ
リア様と、陽の当たる学園のテラスへいどうして、ケーキを選んでいる。このテラスは学生に人気で、私達と同じように、デザートを選ぶ婚約者達がいた。
普段は家の事があって、なかなか会えない彼らは人目を気にせず肩を寄せ合い、手を取りあっている。段々と見ているのが恥ずかしくなってきた私とは違い、リア様は周りが気にならないのか、メニューを見て真剣にケーキを選んでいる。
リア様がメニュー表から顔を上げて「ナル。せーの、で食べたいケーキに指をささないか?」と、無邪気に笑った。
(なんでだろう? 憎めない王子だなぁ)
「いいですよ、リア様」
「じゃ、せーの!」
婚約者達の中で、大きな声を上げた私達は注目を集めだけど気にせず、指したメニュー表を見て笑った。なんと、私たちが指をさしたのはクリームにイチゴたっぷりのショートケーキだった。
「ふふふ、同じだわ」
「ははは、同じかよ」
「リア様、このまま同じのを頼みますか?」
「そうだな……」
リア様はまたメニュー表を開き「苺のケーキは半分にして、他のを頼むか?」悩み始めた。
「ふふ。私この、チョコレートケーキにします」
「チョコレートケーキ? そのケーキも美味しそうだ。それにしよう」
「じゃ、頼みましょう」
ケーキを給仕係に頼もうとしたが、リア様は何かに気付き、眉をひそめた。
「どうしたのですか?」
「僕の弟がいる。どうして学園ににいるんだ? 学園に入学するのは来年のはずじゃ?」
リア様に釣られて、その子を見た――ああ、リア様の弟と言えば第三王子だ。うわぁ。そこ泣いたのは、乙女ゲームと同じ、金髪に青い目ふわふわ髪の可愛い子。
「可愛い、天使見たい」
口に手を当てて笑う姿に、周りの女の子達も目を奪われてる。
「ナル、弟の見た目は天使に見えるがなぁ……中身があれだ……結構ダメだ」
「ダメって。リア様、兄さんでしょ」
「そうだけどさ」と、口を尖らすリア様。
もう一度、彼を見ると、見覚えのあるピンク色の髪が見えた。えぇ、弟王子と一緒にいるのってリリスさん? 2人の近くにはアスタロト様が立っていた。
「どうして?」
「ああ、わかった。弟だな……弟のダリオスが、アスタロトを使って、リリス嬢を呼び寄せたんだ」
そうそう、リア様の弟王子の名前って、ダリオス殿下だった。彼も攻略対象だけど、来年になってからリリスさんと出会うんじゃなかった? もう出会ってしまって、乙女ゲームのストーリーどうなるの? と2人をまじまじ見つめてしまった。
「もぉ~うダリ様った~ら」
「ははは、リリーは面白いんだね」
おお、リリー呼び! アスタロト様がダリオス殿下に頼んで、リリスさんを連れてきてもらった。アスタロト様は命令に従っただけとなると、ダリオス様がリリスさんとの好感度が高い!
(これからどうなるのかしら? 乙女ゲームとは違うストーリーだから気になるわ)
テーブルにケーキが届いても、私は2人が気になっていた。
「ナル、このケーキを食べてしまうぞ!」
「あ、それは、ダメです」
2人も気になるけど、ケーキも食べたい。聞き耳を立てながら、チョコレートケーキを手を伸ばした。
「いただきます。んーっ! 美味しい」
「ほんとか?」
「苺のケーキとチョコレートケーキを半分こにしましょう」
「ああ、半分こする!」
私達は仲良くケーキを半分こしていた。
このチョコレートケーキもいいけど、やっぱ苺のケーキの生クリームは格別。半分だけど2つも味わえて幸せ。
「リア様、美味しいです」
「そうかよかった。まだ食べたいケーキがあるから、明日の授業終わりにも来よう」
「……いいですが。毎日だと、太りますよ」
「別にいい」
笑い合う私達に近付く足音が聞こえ「あれ? イストリア兄上じゃないですか」とテーブルの横に、天使の微笑みを浮かべた、ダリオス殿下が立っていました。
最初のコメントを投稿しよう!