モブ子とケーキ

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モブ子とケーキ

 リア様と、陽の当たる学園のテラスへいどうして、ケーキを選んでいる。このテラスは学生に人気で、私達と同じように、デザートを選ぶ婚約者達がいた。  普段は家の事があって、なかなか会えない彼らは人目を気にせず肩を寄せ合い、手を取りあっている。段々と見ているのが恥ずかしくなってきた私とは違い、リア様は周りが気にならないのか、メニューを見て真剣にケーキを選んでいる。  リア様がメニュー表から顔を上げて「ナル。せーの、で食べたいケーキに指をささないか?」と、無邪気に笑った。 (なんでだろう? 憎めない王子だなぁ) 「いいですよ、リア様」 「じゃ、せーの!」  婚約者達の中で、大きな声を上げた私達は注目を集めだけど気にせず、指したメニュー表を見て笑った。なんと、私たちが指をさしたのはクリームにイチゴたっぷりのショートケーキだった。 「ふふふ、同じだわ」 「ははは、同じかよ」 「リア様、このまま同じのを頼みますか?」 「そうだな……」  リア様はまたメニュー表を開き「苺のケーキは半分にして、他のを頼むか?」悩み始めた。 「ふふ。私この、チョコレートケーキにします」 「チョコレートケーキ? そのケーキも美味しそうだ。それにしよう」 「じゃ、頼みましょう」  ケーキを給仕係に頼もうとしたが、リア様は何かに気付き、眉をひそめた。 「どうしたのですか?」   「僕の弟がいる。どうして学園ににいるんだ? 学園に入学するのは来年のはずじゃ?」  リア様に釣られて、その子を見た――ああ、リア様の弟と言えば第三王子だ。うわぁ。そこ泣いたのは、乙女ゲームと同じ、金髪に青い目ふわふわ髪の可愛い子。 「可愛い、天使見たい」  口に手を当てて笑う姿に、周りの女の子達も目を奪われてる。 「ナル、弟の見た目は天使に見えるがなぁ……中身があれだ……結構ダメだ」 「ダメって。リア様、兄さんでしょ」 「そうだけどさ」と、口を尖らすリア様。  もう一度、彼を見ると、見覚えのあるピンク色の髪が見えた。えぇ、弟王子と一緒にいるのってリリスさん? 2人の近くにはアスタロト様が立っていた。 「どうして?」 「ああ、わかった。弟だな……弟のダリオスが、アスタロトを使って、リリス嬢を呼び寄せたんだ」  そうそう、リア様の弟王子の名前って、ダリオス殿下だった。彼も攻略対象だけど、来年になってからリリスさんと出会うんじゃなかった? もう出会ってしまって、乙女ゲームのストーリーどうなるの? と2人をまじまじ見つめてしまった。 「もぉ~うダリ様った~ら」 「ははは、リリーは面白いんだね」  おお、リリー呼び! アスタロト様がダリオス殿下に頼んで、リリスさんを連れてきてもらった。アスタロト様は命令に従っただけとなると、ダリオス様がリリスさんとの好感度が高い! (これからどうなるのかしら? 乙女ゲームとは違うストーリーだから気になるわ)  テーブルにケーキが届いても、私は2人が気になっていた。 「ナル、このケーキを食べてしまうぞ!」 「あ、それは、ダメです」  2人も気になるけど、ケーキも食べたい。聞き耳を立てながら、チョコレートケーキを手を伸ばした。 「いただきます。んーっ! 美味しい」 「ほんとか?」 「苺のケーキとチョコレートケーキを半分こにしましょう」   「ああ、半分こする!」    私達は仲良くケーキを半分こしていた。  このチョコレートケーキもいいけど、やっぱ苺のケーキの生クリームは格別。半分だけど2つも味わえて幸せ。 「リア様、美味しいです」 「そうかよかった。まだ食べたいケーキがあるから、明日の授業終わりにも来よう」   「……いいですが。毎日だと、太りますよ」 「別にいい」  笑い合う私達に近付く足音が聞こえ「あれ? イストリア兄上じゃないですか」とテーブルの横に、天使の微笑みを浮かべた、ダリオス殿下が立っていました。
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