第三王子 ダリオス

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第三王子 ダリオス

 沢山のカップルで埋め尽くされた、学園のテラスに、第三王子ダリオスもいた。 (うーん、飽きてきたな)  貴族の間でセル兄との婚約は、公爵令嬢イーリス嬢と決まったはずなのに、いまだにセル兄様に近づく女性がいる。  セル兄は周りにも厳しく、自分にも厳しい、ぼくの尊敬する真面目な兄。そんなある日、学園から戻ったセル兄の「あの女性は苦手だ」と、つぶやいた声が聞こえた。  あのセル兄が言うほど、苦手な女性?  ぼくは、その女性が気になった。  だから父上に「ぼく、学園の見学に行きたい」と許可を貰った。  学園に行き、セル兄の苦手な令嬢をアスタロトに呼ばせて見たものの、つまらん。見た目、胸も大きくスタイルはいいが、品のない話し方。  まあ、男爵令嬢だからと言えばそれまで。  ぼくのエロ師匠、騎士団の副団長なら泣いて喜ぶだろう。副団長は「女性は乳が大きければ良い」とか言っていた。  はじめは面白いと思ったが、話しているうちに虫唾が走ってきたし。苺のケーキを食べる仕草も変だ。ケーキを小さく切ってちまちま食べるな、もっと美味しそうに食べろ。 「こぉ~の苺、美味し~い」  へぇ、そーなんだ。  おい、ちょっと待て、苺を小さく切るな。 「ねぇ~ダリさぁ~ま、話、聞い~てるぅ~?」 「ああ、聞いているよ」  ぼくが許してもいないのに、ぼくをダリとか呼ぶな。ぼくをダリと呼んでいいのは、婚約者のアイリーだけだ。  この女性より、アイリーの方が可愛い。  彼女は恥ずかしがり屋で、いつもはツンとしてるが。好きなケーキを食べるときは口いっぱいに頬張って、笑顔で口にクリームたっぷりつける。  可愛いアイリー。  アイリーに会いたくなった……帰ろう。 「リア様、このケーキ美味しいです」 「ああ、美味いな」  リア様? 突然、聞こえてきた声の方を見た。 (ええ⁉︎ イストリア兄上が女性といて笑っている? 兄上は笑うのか? 笑顔なんて初めて見た)  普段は、王城ですれ違っても無表情な兄上。  あれは兄上の偽物ではないのか?    ……よし、確かめてみよう。  近くに立つ、アスタロトを呼び、小声で「この女性をどこかに連れ出して欲しい」と伝えた。アスタロトはコクリと頷き「リリー、ダリオス殿下に用事が出来ました。これから、私と散歩に行きませんか?」と彼女を誘った。  彼女の瞳がキラリと光り、手を口に当てて 「え? アスタさぁ~まが散歩に行きたい〜? うれしい〜。ダリさぁ~ま失礼しまぁ~す」  喜ぶ仕草をした。  2人が去ったのを見送り、ぼくはイストリア兄上に近付き「あれ? イストリア兄上ではありませんか」と声をかけた。  驚く兄上と、お相手の女性。  フフ、なんだか面白くなりそうだ。
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