私と彼のはじまり

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 私と二人きりの時は比較的話すようにはなったけど、職場での至は相変わらずクールで無口だった。  それに、職場での私たちはあくまでも上司と部下という関係なので、周りもまさか私たちが食事に行ったり連絡を取っているだなんて思いもしなかったと思う。  そんな中で、私たちの関係に大きな変化が訪れたのは仲良くなってから一ヶ月半が過ぎた頃。  仕事を終えて帰宅した私は玄関の鍵が開いている事に気付く。  朝、確かに閉めたはずだったのに。  そう思うと自然と身体が震えてきた。  でも、もしかしたら閉め忘れの可能性もある。  とにかく確かめるべきだと思うもやっぱり恐怖から足が竦み、中を確認することが出来なかった。  そんな時、真っ先に頭に浮かんだのは至の顔。  この日至は日帰りで地方へ出張だった為、まだ都内に戻っていない可能性はあったのだけど、もしかしたら帰って来ているかもと思い、メッセージを入れてみると、すぐに既読がついて返事が来て、『ついさっき自宅に着いたところ』という文字を見た瞬間私が至に電話を掛けて状況を伝えると、「危険だから一人では絶対中へ入るな、すぐに行く」と言われ、至が来るのを待った。  彼は本当にすぐに来てくれて、自分が中を確認すると私を残して部屋の中へ。  結果としては、とくに荒らされた様子も無ければ誰かが侵入した形跡も無くて、恐らく閉め忘れだろうという結論だった。
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