私と彼のはじまり

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「あの、玲奈ちゃん、悪いけど私、そういうのは……」  徐々に顔が引き攣りそうになるのを必死に堪えながら作り笑顔を向けると、やんわり断る私。  だって、そうでしょう? あまり大っぴらにしてはいないけれど、私に彼氏がいるという事は前々から話しているし、その事は勿論玲奈ちゃんも知っているはずなのに、わざわざ合コンになんて誘ってくるのだから。 「先輩に彼氏がいるのは知ってますけど、付き合って二年くらい経つのに未だに全然進展無いなんて、先輩の年齢的に焦りませんか?」  酷い言われようだけど、彼女に悪気は無いと分かっている。玲奈ちゃんはいつだって素直な子だから。きっと、本気で心配してくれての事なのだろう。  でも、何故か喧嘩を売られているような、見下されているような気分になった私の顔は更に引き攣っていき、作り笑顔じゃカバー出来なくなってきていた。 「し、心配してくれるのは有り難いけど、私も彼もそんなに焦って無いの。お互い今の距離感がちょうど良いのよ。だから、合コンの件に関しては、ごめんね。行けないわ」  これ以上この話をしていても意味が無い、とにかく何を言われても合コンに参加する意志のない私はハッキリ断って戻ろうとすると玲奈ちゃんは、 「え~! そんなこと言わずに~! もう他にいないんですよぉ〜!」  泣きつく形で私の腕にしがみつき、食い下がってきた。  しかも、玲奈ちゃんの今の言葉で、他に誘える人がいないから何とか理由をつけて私を参加させたいんだという魂胆が明るみになり、どんなに泣きつかれようとも決して首を縦に振る事は無いと頑なに拒み続けた。  そこへ、昼休み終了を告げるチャイムが鳴り響いたのとほぼ同時に、 「いつまでも仕事に関係の無い話を不特定多数の通る廊下でしているんじゃない。さっさと席に着いて仕事の準備をしたらどうだ?」  後ろから冷ややかな言葉が掛けられた。
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