私と彼のはじまり

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 振り向くとそこには、紺色のスーツを身に纏い、ブラウンベージュの髪色で無造作ウルフヘア、目鼻立ちは整い身長は180cm程はある、一般的に『イケメン』と称されるであろう男の人が仁王立ちで睨み付けてくる。  彼は私や玲奈ちゃんが所属する営業部の課長――楡木(にれぎ) (いたる)だ。  機嫌が悪いのか、妙にムスッとしているというか、怒りの表情が滲み出ている。  そんな楡木課長を目の当たりにした私の額には薄っすら汗が滲んでいくけれど、今はとにかくこの状況から脱する事を最優先しないとと頭をフル回転させて打開策を考え、 「あ、あの! 楡木課長! 勤務開始の前に午前中に頼まれていた資料の件でお話があるんですけど――」  その結果、目の前に居る課長に話したい事があると宣言した後で私は玲奈ちゃんに、『課長に話があるから先に戻ってて』と伝え、まだ何か言いたげな彼女が渋々去って行くのを見送っていると、 「――聞き間違いじゃなければ、合コンがどうとか、聞こえた気がするんだけど?」  未だ、不機嫌な表情をしている楡木課長が追い詰めるような口振りで先程の『合コン』の件について問いただしてきた。 「それはそう、なんだけど、断ったから大丈夫」 「西は納得してないようだけど?」 「大丈夫! 絶対行かないから」  人は通っていないけれど、一応廊下なので小声で会話を交わす私と課長。  何故課長である彼が合コンの事をしきりに気にするのかというと……私の彼氏というのが他でも無い、この楡木課長の事だからなのだ――。
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