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暫く駅のホームで休んだ後、何とか歩けるくらいに回復した至に付き添う形で彼の自宅マンションまで付いて行き部屋にお邪魔してみると――中はとんでもなく散らかっていた。
普段、職場での至は常に机周りが整っているからてっきり綺麗好きなんだと思いきや、別にそんな事は無かったらしい。
しかも、キッチンにはインスタント食品が積み上げられていて、明らかに自炊もしていない状態。
これじゃあ余計に具合も悪化しそうだと心配になった私はお節介かと思ったものの一言断りを入れ、片付ける事にした。
至を寝室のベッドに寝かせてから軽く部屋を片付けた私は調理器具が揃っていたのを見つけ、近くにあるコンビニで食材の買い物をして、起きたら食べられるように卵雑炊を作っておいた。
二時間程ベッドに横になっていた至は徐々に体調が戻り、起きてきた時には片付けられた部屋と出来上がっていた雑炊を見てかなり感動している様子だった。
――とまぁ、この事がきっかけとなって私と至はただの上司と部下という関係ではなくなったのだけど、別にこの日に何か進展があった訳じゃない。
後で聞いた話だけど、部屋を片付けたり料理を作ったりは勿論、心配して介抱した事で私に惚れたらしく、その日を境に、至からのアタックが始まったのだ。
至の事は嫌いじゃ無かったけど、あくまでも直属の上司としか見てなかったし、しかも上司とはいえ彼は私よりも年下。
私はどちらかと言えば年下よりも年上の方が好みだった事や社内恋愛は眼中に無かった事もあって、正直初めは戸惑いしかなかった。
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