3人が本棚に入れています
本棚に追加
エレベーターホールにバケツを持って行くと、今度は彼女はどのエレベーターに乗ったのだろうと思った。だけど、どれも地下の駐車場へと降りるエレベーターしかないので、駐車場行きのエレベーターホールだとわかる。
「どれでもいいんだね」
僕は適当なエレベーターに乗ると、下のボタンを押した。下降の最中に、水の張ったバケツの中が揺らいで、上機嫌だったのだろう魚が急に不機嫌になっている。
エレベーターから薄暗くて広大な駐車スペースへ出ると、排気ガスの臭いと微かな女の子向けの香水の匂いがよぎった。あっちかなと、駐車スペースの奥へと、まるで誘われるかのように、坂道を下ることになった。
その間。通路を自動車が往来している。
坂道は全体的に静かな地下二階へ通じていた。
きっと、この先には女の子が乗るべく。親か兄貴がいる自動車があるんだろうな。
と、そこで。足を躓けてしまうというアクシデントが発生。
「う、うわっ!」
どうやら通路に、一個の空き缶があったので踏んづけてしまったのようだ。
ここは、下り坂なので……カラコロと空き缶が下方へ転がると同時に、持っていたバケツをひっくり返してしまい。またしても、魚が宙を舞う。
魚はバケツの水で、盛大に濡れた地面を勢いよく滑り落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!