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初めてのアイスデート⑤
コーンタイプのアイスがトラウマになっちゃったのかな……大好きなアイスがすぐに溶けちゃったら、悲しいもんね。
「そっかぁ」
僕だったら、しょぼんってしちゃう。
切ない気持ちでコーンを眺めていたけど、ふとひらめいた。
「そうだ!」
「うん?」
「将、僕が持っててあげる!」
僕の手なら、アイスはすぐに溶けない。
右手に持っていたコーンを将の口元に向ける。
「はいっ。食べてみて、将」
これなら将も、安心して食べられるはず。
名案だよね!
将を見上げる、驚いた顔で目を瞬かせた。
あれ? 僕、変なこと言ったかな?
「将?」
首をかしげると、将はすぐニッコリと笑った。
「ありがとな、五十鈴」
「うんっ」
「じゃ、こうやって食べるよ」
将は、コーンを握っている僕の右手を、両手でぎゅっと包み込んできた。
「ふぁっ!?」
びっくりしている間に、将がパクッとコーンの先を食べる。
将の手は、とても熱かった。
手を繋ぐのは慣れてきたけど、両手で包み込まれるのは、また違ったドキドキだ。
アイス食べてるのに、体が熱くなってくる。
「あ、あの……将?」
「うまいな」
「う、うんっ」
「これからアイス食べる時は、五十鈴に持っててもらおう」
「あ、えっと、うん……いいよ?」
僕が言い出したことだから、イヤとは言えない。
でも、毎回こうやって握られるのかな?
それはちょっと、鼓動が速くなっちゃうから、遠慮したいな……!
「五十鈴のアイス、うまかった」
「あっ」
将が僕の右手からスッと離れた。
あの熱はなくなったけど、僕の心臓の音は落ちつかない。
アイスを食べに来たのに、将のせいで暑くなっちゃったよ。
残りのアイスを少しずつ食べていると、先に食べおえた将が笑顔でたずねてくる。
「五十鈴、ここのアイス気に入った?」
「うん。どれもおいしいよね」
他の味も気になるし、また食べてみたい。
もちろん、将と一緒がいいけど。
ちらっと窺うと、将は目を細めて、優しく微笑んだ。
「夏休みのうちに、またアイス食べに来ような」
「うんっ!」
将との約束に、大きくうなずく。
夏休みはまだ半分も残っている。
将と、いろんなところに行けたらいいな。
「あ、五十鈴」
「ん?」
「デートもいっぱいしような?」
「!?」
「楽しみにしてる」
将の言葉にカァッと顔が熱くなる。
でも、そっか。
将は僕の彼氏なんだから、ただのお出かけじゃなくて、デートになるんだ。
デートなんてしたことなかったから、ちょっとくすぐったい。
「僕も、楽しみだよ」
そう伝えると、将はとっても嬉しそうに笑ってくれた。
(終)
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