異世界転生チート

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異世界転生チート

 「ねぇ、皆んな?今から私の言う事を、よく聞いて。」   林間学校へ向かう途中のバスが運転手の不注意で谷底に転落して。 乗客である私たち2年A組のクラス丸ごと、いわゆる【異世界】に転生してしまった。 たった今、この世界の【王様】を名乗る王冠を被った白髭のお爺さんから、私たちが選ばれた【勇者】であること、【魔王】を倒さなければ現実世界へ還れないことを告げられた。 喜ぶ者、絶望する者、意味が分からず狼狽える者。…私はそれらの表情に既視感を覚えつつ、重い腰を上げた。 「驚かないで聞いて欲しい。…実は、これ【2回目】なの。…ああ、えっとね。この世界では1人に1つずつ能力が与えられるんだけど、私の能力【時間遡行】で、時間が巻き戻ったんだ。…私たちね、魔王にあと一歩の所で力及ばず全滅しかけて。かろうじて私の能力で逃げ出すことが出来たんだ。」 「何それ。チートって事じゃん。」 理解の早いグループが、私の周りに集まり始めた。 「やばくなったら、いつでもリセット出来るって事でしょ?」 「じゃあ、あんたさえ死ななければ、私たちはいつか帰れるってことだよね?」 そう。…本当に理解が早くて助かる。 私の命さえ保障してくれれば、いつか皆んなで生きて帰れる。…たとえクラスが全滅しようと、私さえ生きていれば。 「じゃあ早速、魔王の弱点教えてよ。」 「私たちの能力と、効率的なレベルアップの仕方も知ってるよね。」 「いいわよ。でもとりあえず、皆んなはこの世界に慣れていかないとね。私は2回目でも皆んなは初めてなんだから。」 「頼りにしてるわよ、チート様!」 …笑わせる。何がチート様よ。 今まで散々私を馬鹿にしてきたくせに。 自分の命が危ないとなると、平気で手のひらを返してくる。 人間とは、本当に醜い生き物だ。   
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