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プロローグ
にぎやかな遊園地から、一人旅立った物がいた。
風船だ。黄色いからだには、ニッコリとした顔の絵が描かれている。
風船はどんどん空へ空へと飛んで行った。
1.親子
ある親子がお父さんと、その子供で、一緒に買い物をして車で帰ろうとしている時だった。
子供がお父さんに話しかけた。
「ねぇ、お父さん。風船が飛んでるよ。」
お父さんはそれまで全く気づかなかった様子で、言った。
「本当だ。」
そう言っている間にもう、風船は海の方へ飛んでいった。
子供が聞いた。
「ねぇ、お父さん。風船てなんであぁやってふわふわ飛んでるの?」
お父さんは答えた。
「中身が、空っぽだからだよ。」
2.青年
俺は某大学を卒業した。
自分で言うのもなんだが、結構頭はいい方だと思う。
なぜこんなに頭がいいか考えると、いつも親、という所にたどり着く。
やはり、親が頑張って指導してくれたおかげだろう。
いままで、親に反発している俺が馬鹿だったと思うよ。
また、今もなおも親に反発しているやつは馬鹿だと思うよ。
でも、特にやりたいことは無い。
ゴロゴロしていると、空をフワフワと風船が飛んでいくのがわかった。
暇なので外に行って見に行くと、黄色の胴体に、ニッコリとした顔が描かれている風船だった。
俺はなんとなくムカついた。
俺はこういう、目つきのやつが嫌いなんだよ。このボーっとした顔つきが大嫌いなんだ。何もやる気がなさそうな目つきが。
エピローグ
風船はどんどん海の方へ飛んでいった。
風船は何も考えないような、目つきでフワフワと飛んでいった。
海の上まで来ると、いきなりバサッと音がした、と同時に風船が割れた。鳥だろうか。
もう、風船のマヌケ顔は見えなくなり、風船の残骸は海の奥へ奥へと落ちていった。
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