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「りーいちっ!」
「わぁっ」
今度は右耳のすぐ近くから聞こえてきたその声に僕は広げていた本を落っことしそうになる。
「あ、聞こえたんだ~、やったぁ」
「え……っ」
僕が恐る恐る振り返ると、そこには僕の幼馴染であり死んだはずの遠藤夏希が満面の笑みでしゃがみ込んでいた。
「うわぁああああ」
僕は今度こそ手元から本を落としながら後ろにのけ反った。
「あははっ、理一驚きすぎ」
いやいや驚くだろ、そう言いたいのに僕は目の前の夏希のことも、いま起こっている現実も到底信じることができずに、ただ間抜けな顔をして口をぱくぱくとさせた。
夏希は鎖骨まである長い黒髪をさらりと揺らすと尻もちをついている僕を覗き込んだ。
「久しぶり、元気だった~?」
「……な、なんで……」
「もうー、冷たいなぁ。可愛い幼馴染との二年ぶりの再会くらいもっと喜んでよ」
「いやいや……これ夢だよな」
僕は馬鹿みたいに自分の頬をぎゅっとつねってみるが痛覚は普通にやってくる。
「いてっ」
「あはは、何してんの?」
夏希がいたずらっ子のような顔をすると白い手をこちらに伸ばし僕の額をツンと指先で弾いた。
「わ……っ」
この世にいるはずのない夏希に触れられたのもあるが、一瞬額に氷が触れたような冷たい感覚に僕はますます目を見開いた。
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