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「つ、つめた……」
「あったりまえでしょ、幽霊なんだから~」
「ゆ、幽霊?!」
「うん、ちゃんと死んでるし。だから冷たいの」
「そ、そんな感じ?」
「なにが?」
夏希は僕の疑問の意味が分からないというように小首を傾げている。
(死んでるとか……幽霊とか……そんな当たり前みたいに)
生まれてこのかた幽霊など信じたことがなかった僕は目の前の“自称幽霊”から直接、幽霊は存在するんだよ、的な話を聞かされてもすぐに理解なんてできない。
けれど目の前にいるのは間違いなく僕の知っている夏希であり、夏希自身が幽霊だと言っている以上、そこを追求してもあまり意味がないようにも思えた。
「おーい理一? 大丈夫?」
「な、なんとか。夏希がその……ゆ、幽霊なのはわかったけどさ」
「うん?」
「なんか……あかる、すぎない?」
僕の疑問に夏希が呆れたようにため息を吐きだした。
「あー、理一って幽霊って皆、陰キャだって思ってる?」
「い、いや……確かに幽霊ってそのあんま口数すくなくってこう……静かに現れるっていうか……って幽霊になったことないからわかんないけど」
「あはは、確かにね~」
ケラケラと笑う夏希を見ながら僕はようやく今目の前に起こっていることが現実なのだと実感してくる。
そしてそれと同時にあることに気づく。
夏希はお気に入りだと僕に話していた、白のブラウスにマスタード色のワイドパンツを身につけているのだが、よく見れば夏希の身体はほんの少し透き通っている。
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