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ep0.プロローグ
「おはよ」
眩しい程の笑顔で挨拶をする男に、起き抜け一気に覚醒した。
目を覚まして最初に飛び込んできたのは己の上司で。
何故こんな至近距離に居るというのか。
「え!? いっ!?」
勢いよく上半身を起こしては、襲い来る頭痛。
あまりの痛さに思わず頭を抑える。割れるかと思った。
ただでさえ混乱してるのに、思考する場所にダメージを受けてしまっては状況が定まらない。
自分の身に一体何があったのか。痛みを逃すために必死である。
「お。絶景」
「へ?」
「ん」
未だ片肘をつきながら横になる男が、人差し指で自分を指した。
どこを指しているのか、未だ涙目ながらも辿れば、そこには露わになった自分の上半身。
ちょっと待ってなんで服着てないの。
「!?」
光の速さで布団を手繰り寄せる。
痛む頭は気にしてられない。
「あ」
「え」
そうして自分の上半身を隠したことで、露わになる男の上半身。
ちょっと待ってくれ。お互い裸で、二日酔いと思われる頭痛。顔を赤くする暇もない。
「えっち」
こ、この男。完全にこの状況でふざけている。
こちとら人生のターニングポイントになるかならないかの瀬戸際かもしれないから黙ってくれないかな。なんて殺意が沸けば、男はまた楽しそうに笑うのだ。
そもそもどうしてこんな状況になったのか。思考を辿れば辿る程に痛む頭。それを見て笑う男。涙目で睨む自分。
最悪な状況だという事しか理解できない。
そうしてこの時にはもう既に、自分の未来は決まっていたのだ。
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