ふたり

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 家に帰りついたユウとソラは、台所に並んで立った。  「スープを作ろうと思う。」  ユウが宣言して、買い物袋の中から野菜やら肉屋ら卵やらを取り出した。  「鍋に入れて、煮ればいいんだよな、きっと。」  ユウが、ふわふわと首を傾げながら、大きな鍋を火にかけた。この部屋には、料理をしない割に調理器具はそろっている。  「味付けは、コンソメがあります。」  確かね、と曖昧な語尾を付け加えながら、ユウは頭上の棚をごそごそと漁り、コンソメの袋を取り出して見せた。  「いつ買ったんだか忘れたけど、たぶん大丈夫だろ。」  そうですね、と、コンソメの賞味期限についてなどなんの知識もないソラも頷いた。  「ソラは野菜切って。俺、肉切るから。」  そう言って、ユウはシンクの上にまな板と包丁を置き、その上に人参を据え付けた。  「キャベツに、セロリに、茄子に、大根。」  取り合わせが若干おかしい気もする野菜類を、ユウがシンクの上に積み上げる。  「全部は鍋に入らないな。適当に調整してみて。」   「……俺、包丁って使ったことなくて、」  「俺もあんまないよ。」  そう言いながらも、ユウはソラの隣に二組目の包丁とまな板をセットし、豚肉を一口大に切り始めた。  「スープなら、あっため直して俺がいない時でも食えるでしょ。」  「……ありがとう、ございます。」  また、ソラのため。  ソラはぎこちなく礼を言うと、人参を持て余し気味に首をひねりつつ、包丁を手に取った。  二人して、手探りで作ったスープが完成したのが、もう夕方になってから。ユウはそれに米を入れた即席リゾットを流し込むと、シャワーを浴び、髪を整え、じゃあ、と片手をあげてあっさり部屋を出ていった。  ユウを玄関まで見送ったソラは、一人でスープの残りを啜り、皿を洗い、それから漢字練習帳に取り掛かった。練習帳は平仮名だらけで、イラストもふんだんに使われていたので、ソラでもなんとか進めることができた。ちょっと疲れると、子供用の辞典をめくってみた。それは全部の漢字に振り仮名がふられていたので、ソラは最初のページからそれを読んでみることにした。  もし、と、考える。  もし、漢字練習帳をちゃんとこなして、高学年用や、中学生用や高校生用も頭に入れて、辞典もしっかり読みこなせるようになったら、寝室の本棚に並んでいるユウの文庫本も読めるようになるだろうか。そして、あの文庫本達を全部読んでみたら、ユウの考えていることも、少しでいいから、分かるようになるだろうか。
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