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ここにいます。
ソラは、ユウの顔を見られないままそう言った。
「へぇ、ほんとにあんたは、ガキ手懐けるのが得意だね。」
イズミは大きな目でぎろりとソラを見やった。ソラはその視線にたじろぎながらも、じっとその場に足を踏ん張っていた。
「ソラ。」
驚いたように、ユウがソラを呼んだ。ソラが自分の言葉に逆らうことがあるなんて、思ってもみなかったのだろう。
「中にいてよ。」
続くその言葉は、ほとんど懇願だった。
「中にいて。ソラには見られたくないことなんだよ。」
するとイズミが、にやりと笑ってソラの肩を押さえた。
「いいじゃん。見ててもらおうよ。これまであんたが俺になにしてきたのか。」
ソラにとって、イズミに触られるのは不快だった。でも、その場に残るためにはその手を振り払うこともできない。そうやってソラが、葛藤しながらもその場にとどまり続けていると、イズミがいきなりユウの腕を引いた。ユウの身体が、イズミの方にかしぐ。そして、イズミは躊躇の欠片も見せず、いっそソラに見せつけるみたいに、ユウの唇をふさいだ。
ユウは、びくりと痙攣じみて震え、イズミの腕を振り払おうともがいた。しかし、イズミがそれを許さなかった。
「あんた、そこで見てなよ。」
ソラに向かって低く吐き捨てたイズミの、ユウより一回り大きな手が、ユウのスウェットをまくり上げる。露わになった平らな腹は、眩しいほど白い。
「やめろよ。ソラ、中に行って。」
ユウの声は、動揺しきっていた。いつも、なにがあっても無防備なほど平然としているユウとは思えないその動揺は、ソラのことも連鎖みたいに動揺させた。
「ソラ!」
ユウの尖った声。イズミが低く笑っている。ソラはそれでも、狭い玄関でじっとユウを見つめていた。目の前で起きていることが、なんなのかくらいは分かる。ユウは、ここで性的に凌辱されようとしている。でも、それが単なる凌辱と言えないくらい絡まった感情が、ユウとイズミの間には存在しているようだった。ソラは、それを見極めたかった。ユウに絡みつく感情についてなら、なんでも知りたかった。
壁際に抑え込まれたユウが、やめろ、中に行って、と、繰り返しながら衣服を乱され、肌に痕を残されていく。ソラは、こんな光景を、かつて見たことがあった。あのとき抑え込まれていたのは、女。あれは、ソラの母親か。幼すぎたソラは、母親の身になにが起こっているのか理解することさえできず、ただ暴力の気配に怯えて凍りついていた。
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