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ゆるふわ出没注意!
初めまして、とまりだよ!
は? って顔してるね。とまりは僕の名前。『丹野とまり』とは僕のこと!
本屋さんに行けば、僕の本置いてあるんじゃないかなあ。
二十七歳B型牡牛座の僕は、小説家なのです。
六年前、就活に失敗しまくって、やけくそで就活日記を小説風にまとめて、出版社に持ち込んでみたら、これがしっかりとっぷりウケたんだよねぇ。懐かしいなぁ。
僕の担当になってくれた編集の高月さんに意見をもらいながら書き直して、出来上がった本が僕のデビュー作、『今日もお祈りされまして。』。
それから僕は小説家としてお金を稼ぐことにしたんだ。
ベストセラーとまではいかないけど、僕一人なら生きていけるくらいにはそこそこ売れてるみたい。
売れてるよ? ほんとだよ?
だってちゃんと見たもん。
本屋さんで僕の本立ち読みしてた女の人が、クスって笑って僕の本をレジに持っていくとこ!
あの時は嬉しかったなぁ。就活で失敗しまくって落ち込んでた時の苦い思い出が、誰かを笑顔にできるなんて。
読者さんが笑顔になってくれれば、僕もハッピー、笑顔きゅんきゅんだよ!
人にはバカっぽいとか、鈍臭いとか言われることもあるけど、そんな僕でも一人前に稼げるんだもん。世の中何が起こるか分かんないよねぇ。
今もね、新作のプロット練ってるところなんだよ。
一昨日高月さんに二、三個見てもらったんだけど、いまいちウケなくて、書き直してるんだ。とりあえず、持ってったやつで、見どころがありそうなのを直してる。
書き直してるんだけど……ね。大きな壁にぶちあたっちゃって。
新卒の就活生くんを出したいんだけど……、就活失敗したから今の僕があるわけで。
どうやったらうまいこと就職できるのか分かんないの!
どうしようかな。想像でも書けるけど、やっぱちゃんとリアルな話にしたいよね。
就活……六年たってもまだ僕を虐めるなんてひどいヤツ! キライ!
はーあぁ。
気分転換にふて寝しよ。
今着てるルームウェア、ふわもこですっごく手触りがよくて、なでなでしてると気持ちよくって寝ちゃうんだよねぇ。
西日が入る窓はカーテン閉めとこ……、あ! いるじゃん! 就活してる人!
窓の向こうはお隣さんのお家が建ってるんだけど、そのお家とは家族ぐるみで仲がよくって、一人っ子のゆーたは僕の幼馴染なの。
こないだゆーた、リクルートスーツ着て出かけてた!
ゆーたはいい子だから、きっと僕とは違って内定とか貰ってるハズ。ゆーたに聞こう!
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