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入れ替わりが解けたあと
翌朝、目が覚めると私はフランセル家の自分の部屋にいた。
身体もしっかり「エリアーヌ」のもの。
入れ替わりが解けたのだ。
私は急いで支度を済ませて王宮へと向かった。
王宮に到着すると、思ったとおり、殿下のお部屋の前では大騒ぎになっていた。
「僕はもう生きていけない! このまま生き恥を晒すくらいなら今すぐ死ぬ!」
殿下の物騒な台詞が聞こえてきて、私はたまらず部屋の中に押し入った。
「死ぬなんていけません、殿下!」
「エリアーヌ……?」
殿下が涙で潤んだ綺麗な瞳を丸くし、ぽかんとした表情で私を見つめる。腕の中には例のぬいぐるみを抱きしめていて、とてもいじらしい。
私は殿下のもとに駆け寄ると、理性と恥じらいをかなぐり捨てて殿下を抱きしめた。
「殿下、好きです。だから死ぬなんて言わないでください」
殿下が私の突然の告白と抱擁に固く身をこわばらせながら、震える声で返事する。
「う、嘘だ。君はこの部屋の有り様を見ただろう? 気持ち悪いと思ったに決まってる」
「いいえ、こんなに想ってもらえていて嬉しいです。それに、殿下だって私の部屋を見て幻滅したのではないですか?」
「まさか。死ぬ前にいい思い出ができた。僕の葬式では君が書いたポエム集を一緒に埋葬してほしい」
「ですから死なないでください。というかアレをご覧になったのですね……」
私も死んでしまいたい気持ちになったが、なんとかこらえて語りかける。
「私も建国祭の日からずっと殿下のことをお慕いしていました。せっかく両想いだと分かったのですから、これからはたくさん殿下にお会いして、殿下のことをもっと知りたいです」
「ほ、本当に……?」
「ええ、本当です。あ、そうだわ、私も殿下のぬいぐるみが欲しいので作り方を教えてくださいませんか?」
「……ああ」
殿下が頬を染めながら、遠慮がちに私の背中に腕を回す。
お互いにやっと気持ちが通じ合ったのを感じて、私と殿下は同時に笑みをこぼした。
「……ずっと好きだった、エリアーヌ」
「……はい、私もです」
──それから私たちは王国でも有名な相思相愛カップルになった。そして今、若い恋人たちの間では、お互いのぬいぐるみを作るのが流行しているという──
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