<1、オワリ、ハジマリ。>

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 *** 「……女神よ」  頭痛を覚えた。  一体全体、どういうことだ。何で自分はまだ意識があるのか。真っ白な部屋で、真っ白なテーブルの前、椅子に腰かけて紅茶を振る舞われているのか。 「これは、一体どういう了見だ?」  しかも目の前にいるのは、かつて自分に“依頼”をしたこの世界の女神、ウィンターである。ふわふわの金髪に青い目が美しいグラマラスな美女は、えっとー、と明後日の方向を見ながら言った。 「ほ、本日は、おひがらもよく、えっとなんていうか、うんたらかんたら?」 「……誤魔化すならもう少し考えてから喋れ。用件は?」 「え、えっと……そのお、紅茶は砂糖入れる派ですかぁ?入れない派ですかぁ?」 「用 件 は な ん だ ?」  がっつり睨みつけてやると、女神はひいいいいい!と情けない声を上げて後ろにひっくり返った。紅茶のポットをテーブルに置いた直後だったのが幸いだったと言っていい。真っ白なドレスのスカートがめくれ上がり、白いパンツが丸見えになった。本当に馬鹿だ、と呆れつつさっさと彼女が置いたポットを手に取る。  そして、しれっと自分のカップにだけ紅茶を入れた。女神のカップに入れなかったのは、彼女が立ち上がった時にテーブルにぶつかって紅茶をひっくり返しそうだと思ったからだ。実際、過去に似たようなことは何回もやっていると知っている。この女神ときたら、女神のくせにどうしようもないドジっ子キャラなのだ。 「ううううううううううう!お、女の子がひっくり返ったんですから、助けてくださいよお!」  女神はパンツ丸出しのまま、駄々っ子のようにひっくり返って暴れている。当然クロヴィスは無視。一人で紅茶を楽しむばかりである。 「女の子なんて年齢じゃないだろう。俺の何百倍と生きてるくせに、よく言う」 「心はいつまでも乙女なんですぅ!」 「さっさと起き上がって用件を言えと言っている。俺は死んだはずだ。それも、禁忌の魔法の代償で命を落としたんだから、生き返るなんて不可能だったはず。なのに何故、俺の魂は地獄にも行かずにアンタの前に呼び出されているんだ?地獄が事故渋滞でも起こしていたか?まあ、大量にクズどもを送り込んでやった自覚はあるがな」 「…………」  女神はお尻をさすりながらも立ち上がり、椅子を起こした。 「……クズどもを送った、って言ってるのに自分も地獄に行くって自覚、あるんです?」 「当たり前だろ」  クロヴィスは即答する。  そんな今更すぎる問いかけがあるとは思ってもみなかった。
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