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とりあえず、サナには話さなければいけない。クロエは重たい口を開いた。
「明らかに、手違いが起きている」
「手違い?」
「ああ。箱の中身は全部わかった。一番右からファイアー・トール・ドラゴン。サンダー・トール・ドラゴン。グランド・トール・ドラゴン。アイス・トール・ドラゴン。ウォーター・トール・ドラゴンの五体だ」
「は……え?ど、ドラゴン!?しかもトールって……」
一気に彼女の顔が青ざめる。ドラゴンの強さは、そのミドルネームで決まる。ベビードラゴン、ならば幼体だからまだ勝ち目もゼロではなかっただろう。しかしトールドラゴンともなれば完全な成体だ。一番強いドラゴンでないとはいえ、一体でも危険なのに二体も倒すなんて自殺行為だとしか思えない。
到底、サナのような見習いが戦える敵ではないはずだ。
「恐らく、何者かの手によって箱の中身が入れ替わっている」
苦々しい気持ちで吐き捨てるクロエ。
「俺達を確実に失格にするために……ベッキーとかいうお嬢様が仕掛けたのかもな。証拠があるわけじゃないが」
ちらり、と観客席の方を見た。すると、最前列のあたりでにやにやとこちらを見ている金髪のお嬢様と、その取り巻きたちが目に入る。その顔で確信した――彼女は入れ替えを知っている、と。
同時に馬鹿なのか、とも思った。ドラゴンを一体でも外に出せば、観客席にいる人間も巻き込まれる。そんなところにいては自分も危ない、ということさえわかっていないというのだろうか。
「ど、どうするのさ、クロエ!?」
サナが血の気の引いた顔で告げた。
「審査の人に、中身が間違ってるってこと言う?でも、この試験のルールって確か……」
「審査員に話しかけた時点で失格、だったな。それでも本来、不正を訴える権利はあるはずだが……それをあちらが認めなかったら一巻の終わり。俺達は失格になるだろう」
「そ、そんなあ……!」
しかし、このまま試験を続けるのはあまりにも危険がすぎる。その審査員も巻き込まれて大怪我をしかねない。観客たちやサナを危険に晒すのも絶対に避けるべきだ。
これは、一度失格になっても、なんとか訴えて再試験してもらえるようにするしかないのではないか。いくらなんでも試験内容が不正に変更されるなんて、そんなのは学園側にとっても不祥事のはず。再試験は認められて然りだろう。
「サナ、鍵を……」
とりあえず渡してくれ。そう言おうとした時だった。
「!」
殺気。
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