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はっとして、クロエは箱を振り返る。五つ並んだ箱は、まだ沈黙している。だが、この嫌な感じは。背中に大量の針を突き立てられたような悪寒は。
「……どうして、嫌な予感ってのは当たるんだろうな」
クロエはサナを背中で庇いながら言う。
「サナ、なるべく後ろまで下がれ」
「え」
「来るぞ」
さて困った。一体どうやって――誤魔化せばいい?
なんで入学試験の段階で、そんなことに頭を悩まされなければいけないのか。
「あ」
サナが小さく声を上げた、次の瞬間。
ピシ。
ピシピシピシピシピシピシピシピシ。
ピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシ!
紫色の箱に、次々と罅が入り始めた。それも一つではない、同時に五つだ。
「うそ」
刹那。
バリイイイイイイイイイイイイイイン!
五つの箱が同時に、粉々に砕け散った。赤、黄、茶、青、水色。中から五体のドラゴンが同時に首を擡げ、姿を現したのである。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「きゃ、きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
サナの悲鳴。
それから、観客席からも同時にいくつもの悲鳴が響き渡った。多くの者達には、ここで初めて箱の中に入っていたモンスターの正体を知ったといったところだろう。
バサバサバサ、と羽を広げ、砕けたクリスタルの破片を踏みつける龍たち。あちこちから混乱の声が響き渡る。
「何何何何!?あ、あれって、ドラゴンじゃ!」
「しかも成体だよ、なんで!?」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「ななななな、なんで、こんな試験に成体のドラゴンなんか使ってんだよ!つかドラゴンなんか使うなよその時点で問題だよ!!」
「知らないわよ、あたしに聞かれても!」
「やばい、逃げろ、逃げろ!!」
「や、やだ、腰が抜けて」
「た、助けてええええええええええええええ!」
「やばいやばいやばいやばい、やばいってこれえええええええええええええええ!!」
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