<2、どっかの馬鹿の後始末。>

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 が、その場合は、人間は全て生き残るはず。  確かに魔族が消滅するのは承服しがたいことではあるが、魔族だけいなくなっても“世界が滅ぶ”ことにはならないのではなかろうか。人間達がそのまま頑張って文明を反映させればいいだけのことであるのだから。 「……まさか」  少し考えたところで、クロヴィスは結論を出した。 「魔族が滅ぼされただけで終わらないということか?」 「ご明察ですう」  はあああああ、とウィンターは深々とため息をついた。 「その兵器、正確には“気に食わない特定の種族や性別、アイデンティティ”を根こそぎ殲滅できちゃう兵器なわけですねえ。元々の目的は、魔族を消し去ることだったんでしょうが……魔族がいなくなれば、今度は別の種族とかに敵意が向くと思いません?」 「あー……差別主義者にとってはこれ以上なく都合のいい兵器というわけか」 「その通りです。次第に、兵器を巡って争いが起きるわけですねえ。でもって最終的にはどっかの馬鹿が、男性全てぶっ殺す光線をぶっぱなしまして……まあ、男性がいなくなったらもう子孫も作れませんから、人類は滅ぶしかないですよね?」 「……馬鹿なの?」  思わず素でぼやいてしまった。  それを撃った奴、撃てばどうなるかなんて一目瞭然なのに一体何を考えていたのだろうか。  そんな経緯で世界が滅ぶだなんて、はっきり言って残念がすぎるのだが。 「……なるほど、理解した」  頭痛を覚えつつ、クロヴィスは告げる。 「その兵器とやらは存在そのものが危険だから抹消したい。でもって、二度と作られないようにしたい。そのために、兵器とその技術を独占した上で永久に破棄、作る気もなくさせる、そのために世界征服をしてほしいというわけか」 「はい、その通りです。その兵器、百年前から作り始めて、おおよそ百年後に完成しちゃうんですよねぇ。でもって完成した兵器があるのが……トレモロ王国の王様に仕える王宮魔導騎士を育てるための学校、聖マリアンヌ学園なんです」 「聖マリアンヌ学園……」  ふむ、と顎に手を当てて考える。  トレモロ王国は、自分が生きていた頃既に存在していた国である。というか、クロヴィスの故郷であった国だ。そして王様に仕える王宮騎士を選ぶ学園、というのもあるにはあった。が、果たしてそんな名前だっただろうか。 「以前は、聖ドリアード学園という名前でしたぁ。それが、大魔導士ドリアード卿が亡くなった後、マリアンヌ卿に理事長が引き継がれまして。名前も変わったってわけですね」 「あ、なるほど」
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