<2、どっかの馬鹿の後始末。>

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 ドリアード卿は結構な年齢の魔法使いだった。自分にとっては、縁やゆかりの深い人物でもある。魔法使いは、その気になれば魔法の力で多少寿命を延ばすことができため、ドリアード卿もそれなりの年まで長生きしたのではなかったか。いや、自分も世界征服でバタバタしていたので詳しくは知らないが。  マリアンヌ、という名前も聞き覚えがある。確か、ドリアードの一番弟子の名前ではなかっただろうか。 「ドリアード卿が亡くなったのは、魔族のせいだとマリアンヌ卿は考えていたみたいでして。それでまあ、彼女も人間の身ですし、魔族を深く恨んで……復讐するため、学園を運営しつつ兵器を作り上げていたみたいですのー」  困りましたあ、とのんきな口調で言うウィンター。 「で、その兵器が、百年かけて完成しそうになってるんですう。ただ、マリアンヌ卿も百歳越えですし、もう自分で兵器を動かす力がなくてですね。聖マリアンヌ学園を主席で卒業した生徒に、兵器と己の理想を託そうとしているみたいですわぁ」 「理解した。つまり、兵器が完成した年に……俺に主席卒業して、兵器を獲得し、それを利用して世界征服をしろと」 「その通り。完成したその年に、なんとしてでも兵器を手にしなければならないんですう。そのためには、聖マリアンヌ学園を主席卒業できるほどの実力者でなければいけない。……魔王である貴方以外に、相応しい人間なんていませんよお」  そういうことか、と納得した。  なるほど、これは確かに他の者に任せられるようなミッションではないだろう。確実に、主席で卒業できる者を神の使いとして送り込まなければいけないわけなのだから。 「言うほど簡単なミッションでないのはわかってます」  しょんぼりと、彼女は冷めてきた紅茶を口にした。 「貴方が前世で魔王であったことは、絶対知られてはいけないですう。特に反乱分子に知られたら、即座に袋叩きに遭うのは目に見えてますし……殺されなくても、学園から追い出されたら兵器を手にすることができなくなってしまいますですう」 「だから、力を抑えた状態で主席卒業しなければいけないわけか。魔王にしか使えない最強クラスの魔法なんてものを使ったら、即バレするだろうしな」 「そうですう。最強の力を持ったまま、最強の力を隠して卒業しなければなりませんし……主席卒業を狙う生徒はたくさんいますし教員の思惑もありますから、間違いなく妨害もあるでしょう。前世の仲間にも勿論頼れません。それでも……やってくれますか」  断られるかもしれない。それくらい厄介なお願い事をしている自覚は彼女にもあるのだろう。
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