<2、どっかの馬鹿の後始末。>

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 が、そもそもこの依頼は、ウィンターだけでなくその上の神々から来ているものである。地獄に堕ちる覚悟はあったとはいえ、ここで断れば余計な責め苦を負うかもしれない以上、洗濯の余地などないようなものだと思うのだが。  それに。 「わかった」  実際のところ、クロヴィスとしても断る理由がないのである。  確かに、苦労して世界征服して、その平和が百年で破られるのは非常に腹立たしい。お前らの力でなんとかしろよと思わないわけではない。でもそれはそれとして――自分が愛した世界の、愛した仲間の子孫たちが理不尽な理由で滅ぼされるのを黙って見ているつもりもないのだ。 「聖マリアンヌ学園と……それから、俺が死んでからの歴史。可能な限り資料をくれ。それから、転生した後の俺の人生や設定がどうなるのかも」 「あ、ありがとうございますう!本当の本当に、助かりますううううう!」 「頑張って平定した世界が簡単に壊されるのを見るのは業腹だというだけだ、お前のためじゃない。……ふむ、いっそ、事故で記憶喪失で孤児院に預けられたとか、そういう設定にしてしまった方が楽かもしれんな。いろいろと知らないことや矛盾点を突かれても言い訳ができよう」  しばし、女神と話し合って、自分の設定を詰めていくことにする。  面倒くさいが、ここで手を抜くわけにはいかない。恐らくこれ以上女神が干渉するのは難しいだろう。精々、時々連絡をくれることがあるかもしれない、程度だ。  以前の世界征服の時もそうだったのである。  ここから先は、自分が、自分の努力と信念で切り抜けていく他あるまい。 「……ということで」  ざっと設定は決まり、情報も貰った。ひとしきり覚えたところで、ウィンターが言う。 「貴方は神暦2102年、三月十五日。……聖マリアンヌ学園中等部の入学試験を受けるその日に、十二歳の少年“クロエ・フェイザー”として転生していただきます。その少し前に、“ホミットン孤児院”に記憶喪失の状態で保護された……ということで」 「ああ」  クロヴィスの体が光に包まれていく。ふう、と息を吐いた次の瞬間、テーブルが随分高くなっていた。  否。クロヴィスの体が縮んだのだ。成人男性の体から、まだあどけない十二歳の少年の姿に。 「年齢は変わっても、顔とか雰囲気は変わってませんから、気を付けて」  ウィンターはにっこり笑って言った。 「それではご武運を……我が同志、クロエよ!」
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