呪う少女

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 私は売られることになった。貧しさに苦しむ人をお前の力でなくすことができると言われ、私はその寺に行くことを決めた。  お前のように貧しい人がいなくならないのは、今の世を治めている新興の一族のせいだと聞かされた。私を寺に連れて来た僧は、親切に世の中のことを教えてくれた。ーー私は怒りを覚えた。そして、彼らを殲滅する術を教わった。  一族の屋敷から手に入れてきたという髪の毛などを用いて、私は祈った。その時は、毒虫だらけの閉ざされた部屋に何日も籠もった。  寺に来てから何年かして、私は激しい頭痛に悩まされるようになった。私を寺に連れて来た僧は、痛みを緩和する方法だと言って、私に触れて様々なことをした。出会った時から変わらず親切な人だと思った。しかし、年々、私の身体の痛む箇所は増し、右腕がしびれて動かすことが困難になった。  そんなある日、髪の毛や持ち物を手に入れて来る役目の者が急病で、私が屋敷から取って来るよう命じられた。屋敷には、美しい装束を身にまとった同じ年頃の少女たちがいた。ーーわけもなく髪の毛を集めて寺に戻った私は、いつもよりずっと短い時間で仕事をやってのけた。  日を置かず、先の屋敷の当主の物も手に入れるように私は命じられた。再び屋敷に向かい目にしたのは、当主らしき男が、全身が爛れて死んでいった娘たちの傍らで、泣き伏している姿であった。  私は思い出した。寺に行くと決めた日、父親が寺に行くのはやめてほしいと泣いていたことだった。娘を売ると言い放った人間がいまさら何を言っているのだと思ったが、寺以外の選択もあったのは確かだった。  かすかに芽生えた疑問により、私は手ぶらで寺に帰った。親切だった僧は、私を罵り、打ち据えた。義の行いを放棄するのは私が愚かだからだと強く咎めた。その変貌ぶりに戸惑いながらも、私は抗った。身体を食い破るかのように激しい感情がわき起こるが、言葉にならず、這いつくばったまま僧を睨みつけ、何度も唸った。  僧が私をさらに打ち据えようと近づいた時、私は爪を立てて相手の皮膚に食い込ませ、そのまま掻き取った。  「やめろ」  最後の力を振り絞って、掻き取った皮膚を吞み込み、私は念じた。僧が不自然に体をよじらせて奇声を上げ、そのまま動かなくなったのを見届け、私の命も尽きた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加