1話

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1話

〜6年後〜 あの時の少女、いや、私は16歳になっていた。 6年前の、あの満月の日、私は死んだ……と思われているだろう。 その通り、私は死んだ。 それは違う。 私は殺し屋組織「ヴァイツェン」の幹部に拾われ、殺し屋となるために厳しい修行をしていたのだ。 私の存在は、ヴァイツェンの中でも一部の人間しか知らない。 なぜなら、家族を殺した組織によって存在を消されてしまったからだ。 存在を消されたから、戸籍上でも存在しない人間となった。 最も、ヴァイツェンの人間は全員戸籍や身分証明書はないが。 ほとんどが身寄りのない人間なのだ。 私は、今年16歳。 やっと、正式にヴァイツェンの人間として認められる年齢になったのだ。 「紗月、お前を正式にヴァイツェンの人間として認める。これからは任務が与えられるようになる。与えられた任務はきちんと執行しろ」 「はい」 「そういえば、パートナーが必要だな。伊織、来い」 「伊織?伊織が私のパートナーですか?」 伊織は、私と同い年で、いわば幼馴染だ。 伊織は確かに体術に長けている。 顔も、悪い方ではないだろう。 だが……性格が…… はっきりと言おう。 ひねくれてる。 いや、終わってる。 少なくとも、私は伊織のことが苦手、嫌いだ。 「なんでしょう」 「伊織、お前が紗月とペアを組め」 「「はぁっ?」」 私と伊織の声がハモった。
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