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 非番の間も古城で2日に渡って警備をした月輪は、疲れるどころか目を爛々(らんらん)と輝かせていた。 「先輩、おかしいと思いませんか」  開口一番、大塚に何か同意を求めてきた。 「何の話だ」  こちらはムスッとして、つまらない所長の朝礼の挨拶に、愚痴の一言でも言いたそうである。 「娘の愛実ですよ。  もしコロシだとしたら ───」  大塚は顔を顰めた。 「あのな、大事なことを忘れてるぞ。  コロシだったら俺たちの仕事じゃない。  捜査一課の仕事だ。  俺たちは主に窃盗犯を扱う三課だぞ」 「そうそう、そこも謎だったんですよ」  大塚はガックリと肩を落とした。 「たまたま身体が空いてただけだ。  脅迫状などの分類されてない仕事が宙に浮いてただけだ」  唾を飛ばして鬱憤(うっぷん)を腫らすように吐き捨てる。 「いや、そんな気はしてましたけど、先輩、何も説明せずに連れて行ったじゃないですか。  てっきり空き巣でも入ったのかと」  朝から不毛な口喧嘩をしても、何も生まれない。  バカバカしくなって肩をすくめた大塚は、 「そうだったな。  で、娘がどうしたって」  と水を向けた。 「もしコロシだったら、娘を呪う理由があるのかと」  2人とも腕組みをして唸った。 「そうか、なぜ今まで気づかなかったのだろう」 「えっ、何か気づいたんですか」 「こういう仕事が打って付けな奴らがいるじゃないか」  大塚はポケットからスマホを取り出すと廊下へ出て行った。
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